日沖発のインテリジェンス

sports 】 2009 / 09 / 12
 ぼくはもっぱらテレビで総合格闘技を見続けているのだけれど、あまり会場に足を運ぼうという気にはならない。これは総合格闘技だけでなく、他のスポーツでも音楽でも映画でも舞台でもそうなのだけれど。美術だけは、ときおり見に行くが、なんだかお付き合いであったりアリバイづくりであったり失われた何かへの服喪のような感じであったりもする。

 一方、雑誌は割とこまめに購入して目を通していたりする。一定の期間、一つの雑誌を読み続けることは、生きていく上でとても有意義なことじゃないかと思う。特に人に焦点をあてた雑誌。

 個人的に印象に残っている雑誌、というのががいくつかある。確か中学生時代に定期購読していた「リーダーズダイジェスト日本語版」。ぼくはこの雑誌でアメリカズカップ(世界最高峰のヨットレース)とホルヘ・ルイス・ボルヘス(ラテンアメリカ文学を代表する作家の一人)のことを知った。オウム事件と連動しつつ爆笑問題やと学会の連載コラムまでをカバーした多面性で90年代とその前後を捉えていた「宝島30」。世界最高峰の総合格闘技イベントPRIDEとともに巨大化していった山口日昇(現ハッスルエンターテインメント代表取締役)が編集長時代の「紙のプロレスRADICAL」。モノを様々な切り口から集積し一覧させる誌面構成でデザインの差異を鮮やかに浮き彫りにしてみせた「RealDesign」(しかし創刊から1年ほど経たあたりでぼくにとっては魅力がなくなった。毎年すばらしいプロダクトが次々に世に送り出されるわけもなく、次第に誌面には以前見たものが並ぶようになったからだ)。その他その他。

 そして今ぼくは、「ゴング格闘技」を毎月読むのが楽しみでならない。

 「ゴング格闘技」の面白さはいったいどういうことなんだろう、と頭のすみに疑問を浮かべながらも毎月わっしわっしと読んでいたのだけれども、おそらく、<世界の中の日本>を意識した上で国際共通語のMMA(Mixed Martial Arts)に迫ろうとする送り手の意識の高さにあるような気がする。
 国内の大手プロモーション(K-1/Dream/戦極)を中心に、修斗、DEEP、CageForce、ZSTなどの中小イベント、柔道、空手その他の格闘技まで幅広く取り扱いつつ、アメリカ、ブラジル、オランダ等の格闘大国の動向を拾い上げることで世界とリンクしたMMAの今を切り取ることが一つの軸としてあり、もう一方で、マッチメイク、人、なんでもありの競技においてクロスオーバーする技術にフォーカスしたインタビューや取材から、ときにその師弟関係や技術の進展といった歴史的背景にまで踏み込む奥行きが、今をより豊かなものにしてくれるのだ。

 テレビの枠の中に切り取られ、もっともらしい紋切り型の中に押し込められた一つのカードの中にある豊かなものをいかにして取り出し、読者に送り届けるか、という一点において、「ゴング格闘技」の真摯な仕事ぶりには瞠目するほかない。

 で、「ゴング格闘技」を読むうちに、試合を一度も見たことがないのに妙に気になる存在としてひっかかってきたのが、日沖発だった。


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3人のオランダ人(Euro2008 Quater-finals:Netherlands - Russia)

sports 】 2008 / 06 / 22
グループCを圧倒的な破壊力で勝ちあがった80年代の伝説ファンバステン率いるオランダと、グループD初戦のスペイン戦で大敗を喫しながらEURO2004王者ギリシアとイブラヒモビッチを擁するスウェーデンを完封してこの一戦に臨むオランダの名将ヒディング率いるロシア。

1998年W杯のオランダを率いてベスト4、次の2002年W杯では韓国を率いてベスト4、2004年にはPSVを率いてUEFAチャンピオンズリーグベスト4を成し遂げる一方で2006年W杯のオーストラリア監督も兼任し、32年ぶりの本戦出場とベスト16入り、その後ロシア監督に就任し、イングランドを地獄に叩き落してEURO2008の準々決勝までたどり着いた。およそオランダ人監督の中で最も成功している人物の一人、それがフース・ヒディングだ。

そして若くしてオランダ代表を率いるマルコ・ファン・バステン。80年代欧州を代表するFWとして3度のバロンドールに輝き1988年のEUROでは記憶に残るボレーシュートを決めてオランダに栄光をもたらした立役者。

そしてスタジアムのスタンドにはもう一人の伝説、オランダサッカーの源流、ヨハン・クライフがいた。

3人のオランダ人がピッチに熱い視線を送る中はじまった一戦はロシアがすべてにおいてオランダを圧倒、準決勝進出を決めた。かくしてぼくのEURO2008もひとまずの区切りとなった。

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輝けるオランイェ(Euro2008 Group C:Netherlands - France)

sports 】 2008 / 06 / 14
夜も深まる午前3時半の東京。待ちに待ったオランダが登場である。今回、オランダはオランダであるがゆえに評価され、それを超える評価はなかったように思う。伝統の両ウイングの突破、4−3−3を捨て、ファン・ニステルローイの1トップの後ろに10番タイプを3人配するフォーメーション、セードルフの不可解な離脱もあり、ファンバステンへの風当たりも相当なものだった。同組のイタリア、フランスは安定した守備陣に加えて前線にも豊富なタレントを擁し、オランダよりも1枚上、というのが衆目一致するところだったろう。

そんな中で迎えたEURO2008初戦のイタリア戦、歴史的な大勝にそれらの声は塗り替えられた。強い、オランダ。それでもぼくは危惧していた。そこに、オランダはいるのか? いつものように、1998年W杯から断続的に繰り返される、オランダを追うショートトリップが、はじまる。

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小国の矜持(Euro2008 Group C:Italy - Romania)

sports 】 2008 / 06 / 14
EURO2004でオランダの失われてしまったものを嘆いてからはや4年。再びEUROの季節がやってきた。季節は流れ、私は残る。これはギヨーム・アポリネールだったか。いや、目にしたのは「ザ・シェフ」でなんだけどね。笑い。

2006年W杯のファイナリスト、イタリアとフランスの2国が入り、開幕前から死のグループと呼ばれていたGroup C。前回はオランダの地上波中継が1試合だけだったところが、今回TBSはグループリーグではこのGroup Cに注目して放送を組んでいた。オランダファンとしてはありがたい。

それでもDFラインの安定度から、オランダはおそらくそれなりに傷を負って、伊仏どちらかを食っての1勝1敗1分けでの決勝トーナメント進出があれば上出来だろうなあ、などと思っていた。しかも、初戦のオランダ−イタリアは火曜の午前3時半。あきらめて高いびきを決め込んでいたら、なんと3-0で完封と歴史的な大勝利を挙げているじゃないですか。どうしたオランダ、強いのかオランダ?!

一方のフランスはGroup Cで1弱の呼び声高かったルーマニア(でもルーマニアは予選ラウンドをオランダと同組でトップ通過なのだが)相手にスコアレスドロー。はやくもきな臭い空気が漂う中、週末のGroup C、2試合の地上波放送はなんとも楽しみなものとなった。

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「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」

sports 】 2008 / 01 / 01
かくして1年はなんとなく過ぎ去り大晦日。ビールとつまみを買い込んで、いざDynamite!!でも見ようじゃないか。ところがあちこち買いまわっていたら放送開始の18時どころか19時を少し回った頃合い。
しかし慌てない。去年は放送開始とほぼ同時に飲み始めたらなかなか試合がはじまらずに1時間が過ぎ、途中でビールがなくなったのである。どうせ今年も同じ罠だろ。何せ18時から23時過ぎまでのロングランだ。案の定、テレビをつけると去年の試合を流している。相変わらずのセンスだな。TBSのスポーツ中継はほんとに垢抜けない。センスがない。が、PRIDEも、いわんやINOKI BOMB-BA-YEもない大晦日なのである。Dynamite!!しかないのである。

そんなわけでようやく開会。以下、テレビ観戦順に。

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