一方、雑誌は割とこまめに購入して目を通していたりする。一定の期間、一つの雑誌を読み続けることは、生きていく上でとても有意義なことじゃないかと思う。特に人に焦点をあてた雑誌。
個人的に印象に残っている雑誌、というのががいくつかある。確か中学生時代に定期購読していた「リーダーズダイジェスト日本語版」。ぼくはこの雑誌でアメリカズカップ(世界最高峰のヨットレース)とホルヘ・ルイス・ボルヘス(ラテンアメリカ文学を代表する作家の一人)のことを知った。オウム事件と連動しつつ爆笑問題やと学会の連載コラムまでをカバーした多面性で90年代とその前後を捉えていた「宝島30」。世界最高峰の総合格闘技イベントPRIDEとともに巨大化していった山口日昇(現ハッスルエンターテインメント代表取締役)が編集長時代の「紙のプロレスRADICAL」。モノを様々な切り口から集積し一覧させる誌面構成でデザインの差異を鮮やかに浮き彫りにしてみせた「RealDesign」(しかし創刊から1年ほど経たあたりでぼくにとっては魅力がなくなった。毎年すばらしいプロダクトが次々に世に送り出されるわけもなく、次第に誌面には以前見たものが並ぶようになったからだ)。その他その他。
そして今ぼくは、「ゴング格闘技」を毎月読むのが楽しみでならない。
「ゴング格闘技」の面白さはいったいどういうことなんだろう、と頭のすみに疑問を浮かべながらも毎月わっしわっしと読んでいたのだけれども、おそらく、<世界の中の日本>を意識した上で国際共通語のMMA(Mixed Martial Arts)に迫ろうとする送り手の意識の高さにあるような気がする。
国内の大手プロモーション(K-1/Dream/戦極)を中心に、修斗、DEEP、CageForce、ZSTなどの中小イベント、柔道、空手その他の格闘技まで幅広く取り扱いつつ、アメリカ、ブラジル、オランダ等の格闘大国の動向を拾い上げることで世界とリンクしたMMAの今を切り取ることが一つの軸としてあり、もう一方で、マッチメイク、人、なんでもありの競技においてクロスオーバーする技術にフォーカスしたインタビューや取材から、ときにその師弟関係や技術の進展といった歴史的背景にまで踏み込む奥行きが、今をより豊かなものにしてくれるのだ。
テレビの枠の中に切り取られ、もっともらしい紋切り型の中に押し込められた一つのカードの中にある豊かなものをいかにして取り出し、読者に送り届けるか、という一点において、「ゴング格闘技」の真摯な仕事ぶりには瞠目するほかない。
で、「ゴング格闘技」を読むうちに、試合を一度も見たことがないのに妙に気になる存在としてひっかかってきたのが、日沖発だった。
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