掌中の実

essay 】 2012 / 01 / 09

 新年早々気がついたのは、長らく使っていた茶碗が割れていたことだった。

 それは台所の洗い物を入れた食器受けの底で、きれいに、真っ二つに割れていた。おそらく洗った皿を茶碗の上に乱暴に置いたせいなのだろう。それにしても、きれいに割れたもので、茶碗ではなくなってしまった何かは、いかにも一対の道具のようにさえ映る。とはいえ、もはや飯を盛るための用は足さないだろう。2つに割れた茶碗を合わせて、とりあえず買い物袋を二重にして流しの下によけた。

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同期と非同期

essay 】 2012 / 01 / 07

 新年である。圧倒的に新年である。これほどまでに新年だったことは1年ほど記憶にない。それもそうだ。例によって何のプランもなく書き始めているのでこんなことをのたまう。新年の抱負はない。新年だが信念はない。流されるままである。私は 愛のない難破船。書いているうちに自分でも、「ふざけるな」と言いたくなってくるのが不思議である。このばかばかしい文体、いい加減どうにかならないものなのか。これでも、大人などというものになれば、訳知り顔に骨董についてなどひとくさりして、分別くさいことを書けるようになるのではないかと、ぼんやりと期待してはいたのだ。大雅の絵を一幅買い求めたいがなかなかね、みたいな、それこそ澄江堂雑記みたいな感じで。ちがう。まるでちがう。澄江堂と衰弱堂くらいちがう。実に正確な比較である。

 まあ、とりあえず関係各方面からは何の苦情も寄せられていないので、こんな書き方をしていても、何の問題もあるまい。確かに苦情は寄せられていないのだけれども、好評だという話も寡聞にして知らない。黙殺されているだけではないか。嗚呼。とりあえず苦情その他はFacebookページまで寄せられたい。前向きに善処します。

 それにしても、しばらく時間を置いて雑記を書くたびに、やれ文体がどうだという枕が必ず入るというのもどうしたものか。さっさと本題に入るがいいさ。しかし問題は、だ。特に本題がないということにあるわけだ。まあ、「同期と非同期」などともっともらしい題目を掲げているからには、何がしか本題はあるにちがいない。が、それだけを書いてしまうと2行くらいで終わってしまうのでこうして引き伸ばしに引き伸ばしているわけである。アイスコーヒーをたくさん飲みたくて、100円ショップで買った紙パック入りのアイスコーヒーを水で割ったら、つい水を足しすぎてなんだか泥水みたいなものができあがる、そうした経験は誰にでもあることだろう。え? そんな経験をしているのはぼくだけなの? 貧乏はいやだね、どうにも。インスタントコーヒーを足して色をつけるといいですよ。そんな知識いらないよ。

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Seesaaブログのデザインリニューアル

essay 】 2011 / 09 / 20
 ご覧のとおり、衰弱堂雑記のデザインが新しくなりました。何か意味があるのか、といわれれば答えを持ち合わせていないのだけれど、ずっと衰弱堂雑記のデザインがしょぼいなあ、と気にはなっていたんですよ。それを言い訳にして更新しないくらいには意識していたわけです。その理由、すごく重たくないか? いやいや、しょせん言い訳ですから。
 
 そんなある日のこと。偶然Webベースのブログテンプレート作成ツール、CSSEZなるものを見つけて、Seesaaブログにも対応していたことから、「やあマイク! これならぼくにでも簡単にリニューアルできるんだ。こいつは驚きだよ!」などと思ったわけです。ところがところが……。そう現実は甘くない。ビヨンビヨンするバーみたいな器具、ドンキで買ったけどぜんぜん使ってないもんな。
 
 それはさておき。いやはや、Seesaaブログのカスタマイズはほんとうにつらいです。いくつかの理由で、CSSEZで生成したテンプレートはそのままでは動作しませんでした。
  • SeesaaブログのカスタマイズはHTMLテンプレート、CSSの他に、HTMLからヘッダ、フッタ、記事、サイドカラムのコンテンツ要素などを、独自記法を用いたHTMLベースのスクリプトで記述する必要がある。
  • このため、カスタマイズにあたっては例えばメインのコンテンツエリアでは、ひな形になるサイト全体のHTMLテンプレート、CSS、記事のコンテンツ要素の出力をトップページ、記事ページカテゴリ別、過去ログなどに合わせて整形するスクリプト、この3つのファイルを確認して整合性を取る必要がありものすごく手間がかかる。
  • 上記の構造による理由から、ローカル環境でのデザインチェックは無理。別々のサブメニューに格納された3つのファイルを実環境でアップデートをかけては目視するか生成されたソースを取って、おかしい箇所を修正していくしかない……。
  • そもそもリニューアル前の衰弱堂雑記のテンプレートがつぎはぎでカスタマイズされていた上、新たにタイトルをh2要素に指定しようとした(デフォルトでは日付がh2に指定されていた)り、ページナビゲーションをナビゲーションエリアを新設して入れ込もうとした(断念)ことで、CSSEZが出力したSeesaaブログ向けテンプレートも大きく修正せざるを得なくなった。
  • フッタをカスタマイズしてカテゴリー一覧を表示しようとしたところ、スクリプトに制限があるらしく呼び出し不能のエラーが出た。サイト内検索の検索結果画面で、エントリのカテゴリ表示を入れようとしたところ、これも呼び出し不能のエラー。
  • そもそも、以前は2カラムのデザインだったものをメイン+右2カラムの3カラムに変更したものの、どうも3カラムは時代遅れっぽい、と思い右サイド1カラムの2カラムデザインに変更することにした。するとCSSの指定がおかしくて右カラムが下に落ちた。笑い。divタグのネスティング地獄を追うのはほんとうにつらい。これを仕事にされている方、尊敬の念を新たにいたしました。
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タグ: design

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経口補水液は風邪に効くのか

essay 】 2011 / 08 / 19
木曜日から不覚にも風邪を引き、えらく熱が上がった。39度突破。あのね、この電子体温計、平熱時には35度台を叩き出すんだよ。この電子体温計使ってから見たことない数字だぞ。もう死ぬ。

ふらふらしつつ、布団に潜り込むが、寒い。こんな時期にヒートテックを着こむ。ジップロックに氷を詰めてタオルで巻いて氷嚢代わり。薬箱に溜め込んだ解熱剤を取り出して服用。しかし一向に熱は下がらぬ。Twitterで何人もに「医者いけ」と言われたんだが、ぶっちゃけ医者にかかる金が今はない。

ここでふと、経口補水液というのを思い出した。
経口補水塩(けいこうほすいえん、: Oral Rehydration Salt)は、食塩ブドウ糖を混合したものである。これを水に溶かして飲用する事で小腸において水分の吸収が行われるため、主に下痢嘔吐発熱等による脱水症状の治療に用いられる。水に溶かした状態のものを経口補水液 (Oral Rehydration Solution)という。

経口補水塩 - Wikipedia
これなんだったかなあ、「医龍」で読んだんだったかな。

作り方は簡単。だいたい1リットルの水の割合で説明されているが、使っているグラスが500mlくらいだと思うので半分にする。

  • 水500ml
  • 砂糖大さじ2杯
  • 食塩小さじ1/4杯
  • ポッカレモン100(カリウムの補給らしい)


で、1杯目は適当に作ったらやたらしょっぱかった。どう考えても塩多すぎた。2杯目はこのレシピ通りに作る。

 ……。

……おお! なんかポカリの味がするよ!

で、さんざん解熱剤飲んでも下がらなかった熱が36.5度までダウン。あと、結構汗が出る。これ、効くのか?



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コンピュータ将棋がぼくに教えてくれるかもしれないこと

essay 】 2010 / 10 / 11
 情報処理学会が時代がかった演出とともに日本将棋協会に挑戦状を叩きつけ実現した、清水市代女流王将vsコンピュータ将棋「あから2010」の対局、気づけばもう今日の13時の話になっていた。女流棋士会ファンクラブ「駒桜」の特設サイトで棋譜中継および中継動画が公開される模様。

 コンピュータ将棋については以前「あなたが知らない(かもしれない)コンピュータ将棋の世界」というエントリにまとめて書いたので詳しくはこちらを。

 で、今回の対局。コンピュータ将棋側は5月の世界コンピュータ将棋選手権の結果と関係なく、独自に合議制のプログラム「あから2010」を用意して臨む。ハードウェアは東京大学のクラスターマシン
  • Intel Xeon 2.80GHz, 4 cores 109台
  • Intel Xeon 2.40GHz, 4 cores 60台
の計169台 676 coresという恐るべき環境(バックアップ系も別途用意)。第20回世界コンピュータ将棋選手権ではGPS将棋が320プロセッサを持ち出してきて話題を呼んだのですが、このときはCore2Duoマシンが307台含まれておりスペックではたぶん遥かに上。

 選手権優勝プログラムの「激指」のほか、「GPS将棋」、「Bonanza」、「YSS」の4つのプログラムの合議により指し手を決定、合議マネージャー部分を「Bonanza Feliz」のTeam Bonanzaのメンバーが開発した模様。

 合議制の採用にあたっては技術的なトライとして評価しつつも、純粋に強さを求めるという点で現時点では疑問視する声もまま出ている様子。同じリソースを使った場合、単純にメインのプログラムで合法手の大きな枝を切りだして、それぞれの枝をクラスタで並列処理して深読みした結果を評価値で戻すアプローチの方が単位時間あたりの読みの深さをより深くできるがゆえに強いんじゃないか、といったあたりで。実際にBonanza Felizは選手権でGPS将棋やBonanzaをクラスタ並列処理化したボンクラーズに敗れているわけですが、一発勝負では実力差を完全には測れないこと、完全に異なる思考ルーチンを用いた合議制については過去にあまり実績がない(そもそも開発者が複数の全く異なる思考ルーチンを用意するのが大変)ことから、こればかりはやってみないとわからない、としか。

 ブクログのパブー田中徹さんと難波美帆さんが今回の対局についてのノンフィクションを公開されているのですが、その中にTeam Bonanzaのメンバーで合議制に最初に取り組んだ電通大伊藤さんのインタビューがあり、複数の市販ソフトによる合議では有意に強いという結果が出ているとのこと。

 ただ、今回の対局に関していえば、Twitterでもつぶやいたように、個人的には合議制かクラスタ並列かといった部分よりも、持ち時間3時間、持ち時間消費後1分将棋、というルールにコンピュータ将棋側がどこまで対応できているのか、が勝負のカギを握っているのではないかと思ってます。

 コンピュータ将棋は世界コンピュータ将棋選手権の決勝ルールでは持ち時間25分切れ負け(持ち時間の25分を使い切った時点で負け)、30分ごとに接続されたPC上のプログラムをマッチングして自動対局を行う「コンピュータ将棋連続対局場所 (floodgate)」では持ち時間15分切れ負けのルールを採っています。これらのルールでは局面ごとに読みの深さを変えて持ち時間を有効に消費する、といった処理を考慮する余地がほぼない。実際にfloodgateで対局を観戦するとものすごい勢いで局面が進んでいきあっという間に決着がつく感じ。持ち時間を使い果たした後の1分将棋でもそれなりの深さまで読めるコンピュータ将棋が、676コアで3時間にどれだけの処理をこなすのか想像もつきません。

 この持ち時間を、どの局面にどれくらいの割合で投入し深く読みにいくのか、という部分においては、コンピュータ将棋の世界ではあまり研究が進んでいないような(知らないだけかもしれませんが)。さらに清水女流王将の持ち時間3時間が、こちらではコントロールできない形で与えられる(相手が手を考えている時間も当然思考する)わけですが、与えられた応手をうまくフィードバックして限られた時間というリソースを最大限に活用できるのか、についてちょっと興味があるのです(が、全然調べてません)。

 機械学習、クラスタ並列処理、合議制に続いて、コンピュータ将棋は、時間という限られたリソースをいかに最適配分するか、という新たなチャレンジに直面しているんじゃないですかね、これ。現状、いくつかのプログラムでは序盤〜終盤までに複数の評価関数を用意して切り替えて用いる、といった実装があるはずですが、局面ごとに細かく読みの深さを変えるといった処理を行うものはなかったような。終盤に通常の思考ルーチンから切り替えて詰め将棋ルーチンを使う、という処理は割とあるはずですが。

 とまれ、この新たなスタートラインから積み重ねられるだろう成果が、いつかぼくに、時間をどう使うのが正しいのかをロジカルに教えてくれるかもしれない、と期待しています。





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