神林長平「アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風」(ハヤカワ文庫)

books 】 2011 / 09 / 20
 この作品をどう説明すればよいのか。2年ほど前に読後いったん書き留めたものの、迷った末にmixiの日記のみに公開していた。いま改めて読み返してみると、これ以外に紹介しようがないと思えるような書き方をしていたので、若干加筆してこちらでも公開。

 南極に突如出現した巨大な《通路》、その先にある未知の星、フェアリイ星。地球に対し攻撃を仕掛けてきた異星知性体ジャムと、フェアリイ空軍(FAF)特殊戦部隊との戦いを描いてきた「戦闘妖精・雪風」シリーズの三作目。
 

   


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サイン本

books 】 2009 / 12 / 19
 以前、「アクセス解析イニシアチブ(a2i)の標準化分科会に参加します」というエントリで触れた、a2iの標準化分科会。10月28日に発表したガイドラインはかなり注目を集めたようで、さらにその先に進もうと2回目のオフラインミーティングが今週の火曜日に開催されることとなり、行ってきました。
 メンバーがさらに増え、コアな話題をコアな人々がごく普通に語り合うという、知らない人からすると「この人たち何なの?」といった雰囲気を堪能。詳細は今後順次検討を進めていくわけでとりあえずここでは記しませんが、基本的にはすでに公表されたガイドラインへの指標項目の大幅な追加が予定されています。

 そして標準化分科会が行われた場所でそのままa2iの懇親会へ。広いと思われた会場が気がつけば身動き取れないくらい入ってます。幾人かに個人的な《旋風のごとき諸事情》(ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー風)について説明。

 さて、本題。この懇親会でクイズ大会があって、正解の多い順に賞品が出るという流れに。で、@makitaniさんともう一人の方が全問正解を果たして颯爽と賞品をゲットする中、衰弱も2問間違いで賞品にありつけることに。するとそこにはWeb解析関係の本が積んであるわけです。迷わず選び取りました、アイ・エム・ジェイの村上さんと手崎さん(@ytesaki)の「ウェブ解析力 ROI(投資対効果)を最大化するアクセス解析の実践的ノウハウ90」(翔泳社)です。え? 読んでないどころか、持ってないの?! はい! すみませんでした!

 というわけで、当日懇親会に参加していた共著者の手崎さんに早速サインをお願いしました。

Web解析力

 どうです! イラストつきです! 手崎さん曰く、はじめてサインをしたとのこと。ぼくの私物である緑のインクが入ったペリカンの万年筆で書いていただいたので、おそらく今後もこれと同じサインはそう出回らないはず。まさにファン垂涎の一冊であります。しかし、恐縮しきりでした、はい。何せ、手崎さんはぼくが知る限りでもかなり以前から衰弱堂雑記を読んでいると思しき貴重な存在だったのです。

 いったい誰がこんな盆暗なblogを読んでいるのだろうと常々不思議に思っていたのですが、ずいぶん前にLivedoor Readerで衰弱堂雑記のRSSを自分で登録して、フィードの詳細を確認したことがあるのです。そのときにytesakiさんという人がどうやら読んでくれているらしいというのが最初で、その後TwitterでWeb解析界隈のつながりが次第に可視化されて再発見したという次第。お前、数少ない雑記の読者の本を買わないとは不義理にも程があるだろう! 返す言葉もございません……。

 いやー、いいものもらったなあ、と思ったのもつかの間、衰弱、結構プレッシャーかかってます。これ、書評書かないわけにいかないでしょ!

 えー、いただいたあとも目を通せず、今日もベルナール・スティグレール来日のシンポジウムに半日取られ、とりあえず「もらったー!」だけは報告しようとこの愚にもつかない文章を綴っている次第でございます。

 ちなみにざっと目を通しましたが、個人的にこの手の「○○力」みたいな本に偏見があったのですが、これはWebサイトの実務寄りの人は買って損のない一冊では。すでに書評をあげた「Webアナリスト養成講座」という大著はWeb解析のすべてを盛り込もうとした、Webアナリストというスペシャリストとして生きていく人にとって必携の一冊ですが、一度に理解するには相応の知識と経験を求める、人を選ぶ本でもあります。

 「ウェブ解析力」は具体的な事例を盛り込みつつ、短い項目ごとにポイントを押さえ、すぐに使えそうな情報をうまくまとめている感じです。Webサイトの運営に携わっていて、必要に迫られてWeb解析についてこれから勉強したい、という人は、まずこちらを手にとって、自分がやらなければいけないタスクに関わる項目を中心に目を通して具体的なイメージをつかむ方が近道かもしれません。かなり突っ込んだ解析まで含んでいるので、一読してわからない部分は飛ばして、実践を通じて少しずつできることを増やしていくような使い方でどうぞ。
 装丁を担当された宮嶋章文さんもいい仕事をされてます。二色刷りの本文は適度に図版やスクリーンショットを交えて内容をよりわかりやすく伝えています。



 懇親会ではいつもTwitterでお世話になっている方々をはじめ、何人かとお話しさせていただくことができました。古い知人でもある@sakamotohさんとはおよそ2年半ぶりの再会。実践CMS*IAを運営されている楽天の@mak00sさんにお話しを伺えたのも収穫でした。シャープなエンジニアが共通して持っている独特のたたずまいが印象的。ぼくも来年は「実践」の年にしたいと思いますが、さて、どこまでできるか……。

 そういえば、我が家にサイン本なるものはいったい何冊あったろう。大学時代のサークルの先輩の本、人形作家の土井典さん(彼女の人形は澁澤龍彦が所有していたことで知られている)の作品集、美術出版社でバイトしていたときのデザイン学の先生の著作(これはすごくいい本だが絶版のはず)、年長の畏友でいまはニューヨークにいる平川典俊さんのカタログレゾネ、かな。結構あるものだなあ。



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藤本隆志「ウィトゲンシュタイン」(講談社学術文庫)

books 】 2009 / 05 / 19
 1989年。ハイデガー、ヒトラーらと同じ年にウィーンの裕福な家庭の末子として生まれた男。3人の兄は自殺した。実験のため凧をあげ、第一次大戦では志願兵として戦功を上げ、トルストイを読み、イタリアの捕虜になった。親の財産には目もくれず、1冊の本を書き上げることでその道に自ら終止符を打ったと確信し、小学校教諭として働きながら生徒のための語彙集を編んだ。父兄と衝突して職を辞した後は、庭師になり、建築家として姉の家を建てた。やがて終止符を打ったはずの世界に舞い戻り、ケンブリッジ大学教授となった彼。ネクタイもしめず、フランネルのズボンとシャツ、ジャンバーを着た、奇矯で、情熱的で、生徒たちに強い印象を与えた彼は、自らその座を捨てた。ロシアに憧れ、新大陸で死にたくないと漏らし、そして、死ぬまで考えることを捨てなかった男。

 彼、ウィトゲンシュタイン。

 二十世紀を代表する思想家の一人、ルードヴィヒ・ウィトゲンシュタインの生涯と思想を、大修館書店から刊行された全集の主要著作の翻訳でも知られる藤本隆志氏がまとめた一冊、「ウィトゲンシュタイン」(講談社学術文庫)を読了。1981年に講談社の「人類の知的遺産」シリーズの1冊として刊行されたものを加筆・訂正して1998年に文庫化されている。



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タグ: Book  Philosophy

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デビッド=フォスター・ウォレス死去

books 】 2008 / 09 / 17
「ヴィトゲンシュタインの箒」という特に有名でも必読でもない小説のレビューをずいぶん前に書いたのですが、昨日少しアクセスが増えていたので気になって検索して気づきました。46歳、自殺とのこと。
 デイビッド・フォスター・ウォレス氏(米作家)米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)によると12日、ロサンゼルス郊外クレアモントの自宅で死亡しているのが見つかった。46歳。自殺とみられる。

 ニューヨーク州生まれ。87年、長編小説「ヴィトゲンシュタインの箒」でデビュー後、ポストモダン文学の気鋭作家となった。「奇妙な髪の少女」などの邦訳作品がある。(ロサンゼルス共同)

2008/09/14 14:30   【共同通信】
なにか申し訳ないような気もするのだけれど、この訃報を目の当たりにしてもぼくは特に心動かされるものはなくて、むしろその置き場のなさに当惑しているようだ。いくら書棚に置きっぱなしで数年間放置していた1冊を読んだだけにしても、作家の死はもっと重いものなんじゃなかろうか。

「ポストモダン文学の気鋭作家」というのは、なるものなんだろうか。この語りようのなさにも、文学の死が漂っている、とでもうそぶいておけばいいのだろうか。




タグ: Book  novel  Literature

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表紙も本に含まれる

books 】 2008 / 03 / 26
404 Blog Not Found「誰が講談社現代新書を殺したか」に目を通すと、2冊の新書の表紙の画像があった。

最初意味がわからず、よくよく眺めてみれば新版の表紙がまあ実にみごとに背表紙が褪色。矢吹ジョーよろしく真っ白に燃え尽きている。隣り合って書棚に並んでいたという旧版のマットコートの表紙はといえば、クリーム色は落ちているように見えるが書名はきれいに読み取れる。

小飼さんはこの背表紙が果てしなく漂白される新しい装丁を手がけたデザイナーの中島英樹と講談社を槍玉にあげていて、はてなブックマークのコメントを見ても少なからざる人がこの新装丁以降、講談社現代新書を手に取らなくなったといっている。個人的には新装丁に幻滅して敢えて書棚を避けるということはないけれど、手元にあった東浩紀「ゲーム的リアリズムの誕生」を眺めてみれば表紙も章扉も安っぽく、装丁としてはおよそレベルが低い。かといって、以前の杉浦康平の装丁もさほど気に入っていた感はない。

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タグ: Book  design  IA

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