タンメン・クロニクル

foods 】 2007 / 12 / 16
何を食べて、何を食べないか、味の嗜好を決めるのは家庭の食卓なのだろうか。ことが味噌ラーメンとなるとそればかりとも思えないが。そもそも、食卓に自家製のラーメンが並ぶ家庭なんてあるんだろうか。ちばあきおの「キャプテン」で、朝練のために早起きしたイガラシ兄弟が炒め物は音がうるさいので家族に迷惑がかかるといって寸胴でラーメンを作っていたが、あれは家庭の味なのか。イガラシ家は中華料理屋を営んでいる。まあ、そんな事情でもなければ人は朝から寸胴に湯を沸かしたりしない。たいがいはインスタントか、せいぜいが袋に3玉ほど入った生麺タイプのラーメン、あとはたまに出前で頼んだときに食べるもので、ラーメンは家庭の味と呼ぶにはいささかはずれたところにあったような気がする。

小学生の頃、1年間ほどスイミングスクールに通っていたことがある。子供の頃から何となく「スジ」にこだわる性向を持っていたぼくは、父親に無理やり入れられたソフトボールチームをやめたくてしかたがなかった。日曜日になると、学校の周りをランニングさせられるのだが、なぜそんなことをするのか本気でわからなかったからだ。それで、別の選択肢としてスイミングスクールとやらを持ち出した。別のスポーツをやるのなら筋が通るだろうと子供ながらに考えたわけだ。近所のSくんと一緒に週1回、電車とバスを乗り継いで通った。帰りは駅までバスに乗らずに歩き、バス代を使って途中の駄菓子屋で買い食いした。これだけでも、ソフトボールに比べよほど優遇されていたわけだ。さらにはお腹が空くと、駅ビルの地下にあった「ゆうかり」というカウンターだけのラーメン屋にいった。Sくんは味噌ラーメンを、ぼくはタンメンを食べた。目の前で野菜を炒めて作ってくれる、あのタンメンはうまかった。ことに冬の寒い夕方にはなおさらだ。その店はもうない。

あのとき、味噌ラーメンではなくタンメンを選んでいた理由はあったのだろうか。思い返すと、味噌ラーメンをおいしいと思った記憶がない。別にまずい味噌ラーメンばかり食べていたからではなく、そもそもが味噌ラーメンを食べた記憶がないのだ。人はなぜ味噌ラーメンを食べるのか、実はぼくにはよくわからない。初めて中華料理屋で頼んだのは、ワンタンメンだったような気がする。ラーメンを頼もうとしたら、親がワンタンが入っているほうがよかろうとすすめたように記憶している。タンメンは親が食べていたのを見て頼むようになったのではなかったか。考えてみれば、両親とも味噌ラーメンを食べていた記憶がない。衰弱家の家風なのかこれは。

そういうわけで、ぼくはよくわからないままタンメンを食べつづけるのである。タンメンというのは、割とどこにでもあり、あまり特徴のないメニューだと思う。どこで食べてもそれなりの味というのは、頼むのに安心ではあるがあまり期待もできないということだ。自然、わざわざ「うまい」といわれる店を探して足を伸ばそうとも思わない。タンメン中毒、という人をぼくは知らない。そんなわけで、記憶の彼方に消えた「ゆうかり」の味を除くと、おいしいと思ったことは数えるほどだ。

中で一番うまいと思ったのは大学時代のバイト先の一つだった東中野の「十番」。平打ちで歯ごたえのある麺と濃い目のスープがマッチしてうまい。この店は、もう一度行こうと思ったきりもう随分行っていない。

桜木町の「三幸苑」は評判を聞いていってみたら餃子の方がおいしかった店。桜木町と日ノ出町の間、WINSの目の前で、タンメンと餃子を頼んで食べていたら中年夫婦が来て餃子4人前とご飯を注文していた。タンメンは特に記憶に残る味でもなく、餃子があまりにおいしかったために、自分も餃子2人前を頼むのだったと後悔した。苦笑。

職場があるのは白金高輪なのだが、少し歩いたところに「中華料理 大宝」という店があって、タンメンがうまいという。この店、開店時間がよくわからなくてなかなか行けなかった。夜、覗くと真っ暗でちょっと先にある家系ラーメンの「笑の家」に行くと帰りには開店していたりする。ようやく開店しているところに遭遇して入ったときには狭い店は一杯で、前に注文していた5人ほどと一緒にタンメンが出てきた。確かにうまいことはうまいのだが、その1回きりで行っていないのはそれほど後を引く味ではなかったからだろう。

そんなタンメン遍歴をへて最近たどりついたのが、池袋の「中国家庭料理 紅楼」。この店は最初、定食がそこそこうまくて、焼き餃子や水餃子が安くてうまいためちょくちょく通っていた。安っぽいテーブルクロスがかけられたテーブル席でテレビを眺めながら定食を食べるという実に飾り気のない店で、『麺類オススメ』と書いてあるのを右から左に流していたのだが、冬の寒さにふとタンメンを頼んでみたらこれがうまかった。「十番」のタンメンとよく似た塩味濃い目の平打ち麺。豚肉がちょっと小さいのだけが残念だが、ボリュームもあり、680円と値段もまあよしだ。水餃子、焼き餃子とも380円と安く、合わせて食べると1060円で非常に贅沢をした気分に浸ることができる。

うーむ、安い男である。

タグ:food ラーメン





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この記事へのコメント
タンメンは、小さい頃に、親が「タンメン食べに行こう」と言って食べに行くものだった。親の好物だったのかも。久しぶりに食べたくなった。
Posted by ムラダス at 2007年12月17日 01:40
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