衰弱堂の世界十大小説

books 】 2007 / 10 / 21
はてな界隈でなぜか世界十大小説を選ぶブームを目撃。大元は「Where Sweetness and Light Failed」の『世界十大小説』というエントリーかしら。その他

after game over
「石版!」
愛・蔵太の少し調べて書く日記

などを見ていたら、after game overのidiotopeさんのブックマークに[世十本]のタグでまとめられていた。まだ全部見ていません……。

というわけで誰も求めちゃいないが便乗して10作品選んでみます。ポイントは

・過去に読んだものでかつ再読に耐える
・「物語」ではなく「文学」でもなく「小説」
・22世紀にも残したい
・日本語で現在読むことができる(たぶん)

の4点。

1.スティーブ・エリクソン「黒い時計の旅」(柴田元幸・訳、白水社uブックス)
……描写、ストーリーとも極上の「小説」。
2.フョードル・ドストエフスキー「悪霊」(江川卓・訳、新潮文庫)
……「カラマーゾフ」よりも間違いなく面白い。話者の設定が破綻していたり、<スタブローギンの告白>をどこに挿入するかなども含めて「小説」。
3.埴谷雄高「死霊」(講談社文芸文庫)
……ドストエフスキーに真っ向から対峙した唯一の作家の小説。「死霊」の奥行きを越える小説は恐らく存在しない。
4.安部公房「箱男」(新潮文庫)
……本来ならば大江ではなく彼にノーベル文学賞を与えるべきだった。「密会」とどちらを採るか難しい。
5.トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」(志村正雄・訳、筑摩書房)
……ピンチョンの長編の中では最もリーダブル。だが、ピンチョンらしさが充溢した作品。
6.ミラン・クンデラ「不滅」(菅野昭正・訳、集英社文庫)
……クンデラの作品はどれも「小説」としかいいようがない。読んだ中では「不滅」が一番美しいのでこれを。
7.フィリップ・ディック「ヴァリス」(大滝啓裕・訳、創元推理文庫)
……大滝の詳細な訳注も含めて「小説」。「高い城の男」と悩んだ。
8.三島由紀夫「金閣寺」(新潮文庫)
……「豊穣の海」4部作を一作品とするならそちらを採るべきかもしれない。
9.マニエル・プイグ「蜘蛛女のキス」(野谷文昭・訳、集英社文庫)
……自分で入れてしまって何だかあっけにとられた。「百年の孤独」を敢えてはずすならこれを入れるべきかなと。
10.カート・ヴォネガット「スローターハウス5」(ハヤカワ文庫)
……村上春樹や高橋源一郎を入れるなら、むしろヴォネガットだろうなと。


小説は机に向かってしかめつらしく読むものでもないと思うのですべて文庫・新書などの軽装版から採りたかったが、ピンチョンのみハードカバー。

選外はガルシア・マルケス「百年の孤独」(鼓直・訳、新潮社)、ホルヘ・ルイス・ボルヘス『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』(「伝記集」(鼓直・訳、岩波文庫)所収)、高橋源一郎「虹の彼方に」(講談社文芸文庫)、筒井康隆「虚人たち」(中公文庫)、開高健「夏の闇」(新潮文庫)、夢野久作「ドグラ・マグラ」(角川文庫ほか)、中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫ほか)、半村良「妖星伝」(講談社文庫)、ポール・オースター「シティ・オヴ・グラス」(山本楡美子、郷原宏・訳、角川文庫)、神林長平「膚の下」(ハヤカワ文庫)、クライヴ・バーカー「不滅の愛」(山本光伸・訳、角川ホラー文庫)あたり。って、あたりの方が多いな。笑い。

太宰治は十大小説家ならばプイグの代わりに入れるが採るべき作品に悩みはずした。古井由吉も同様だが、読んでいない作品の方が多いので採るべき作品がわからずはずした。大江健三郎も入れていい気はするが、並べていくとやはり選からはずれそうだ。女性作家で入れるとすればたぶん倉橋由美子「スミヤキストQの冒険」(講談社文芸文庫)だが、読んだのがずいぶん前でもうまるっきり覚えていないので入らない。

どうしても読み終えることができないが入れる可能性があると考えているのはボリス・ヴィアン「北京の秋」(岡村孝一・訳、早川書房、絶版)、ルイ=フェルディナン・セリーヌ「夜の果てへの旅」(生田耕作・訳、中公文庫)、エリアス・カネッティ「眩暈」(池内紀・訳、法政大学出版局)の3作。いずれも読んでいるとひどく憂鬱な気分になりどうしても読み通すことができずにいる。「北京の秋」はいずれにせよ絶版だからはずさざるを得ないのか。

ジョン・バースも「やぎ少年ジャイルズ」(渋谷雄三郎、上村宗平・訳、国書刊行会)やその他の作品を読み終えていれば入れたかもしれない。「フローティング・オペラ」(田島俊雄・訳、サンリオ文庫、絶版)が絶版で、「旅路の果て」(志村正雄・訳、白水社uブックス)を採るのは躊躇する。

結果的にすごく偏った読書をしていることがよくわかりました……。特にヨーロッパの作家が全然入らないのに愕然。フランス文学はたいがい駄目なんですよね。ドイツも。イタリアはカルヴィーノが未読でモラヴィアもあまり積極的に推す感じでもなく入らない。






Comment(2) | TrackBack(1) | books

この記事へのコメント
エリクソン「ルビコンビーチ」
オースター NY三部作とリヴァイアサン
ディック「火星のタイムスリップ」
ヴォネガット「タイタンの妖女」
などが好きです

「蜘蛛女のキス」も読みました。
Posted by マル季 at 2008年03月23日 16:02
「競売ナンバー49〜」も好きですね。半村良なら「石の血脈」、開高なら「裸の王様」が好き。
Posted by マル季 at 2008年03月23日 16:04
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/61782831
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

「私家版 世界十大小説」流行の兆し? 秋の夜長に選ぶ本
Excerpt: 読書の秋というだけあって、ブログの中でも読書についての記事が流行しつつある(画...
Weblog: BLOGCH NEWS/TOPICS-ブロッチ-
Tracked: 2007-10-22 16:46
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。