ひたすら本を読んでいた

daily life 】 2007 / 10 / 13
調子が今ひとつだと思ったら季節の変わり目恒例の風邪に見舞われ完全衰弱。病床で必死に汗をかきつつ本を読む日々でした。以下列挙と寸評。

北村薫「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「六の宮の姫君」「朝霧」(創元推理文庫)
……「円紫師匠と私」シリーズをまとめて一気に。人に薦めたが単に自分が読み返したかっただけなのかもしれない。当時買い求めたものが「朝霧」の単行本以外みつからず、古書店で買いなおした。実に贅沢な体験。なかでも「六の宮の姫君」の持っている面白さは類書を見つけるのが難しい。作中に引かれている芥川、菊池寛などのものは青空文庫にありそう。誰か作中の登場順のリンク集を作った人はいないだろうか……。

高千穂遥「魔道神話1〜3」(徳間文庫)
……古本屋で1冊100円でまとめて購入。駄作だと思ったのであえてリンクはしない。高千穂遥の小説はよく考えると初めて手にとったような。1500ページ弱あって、一気に読み終えたが何も残らない、ある意味ではすごい作品。だが、これを読むくらいなら半村良(例えば「妖星伝」)なり、高橋克彦(例えば「総門谷」)なり、日本にはもっとすぐれた伝奇ロマンの書き手がそれこそいくらでもあるし、バイオレンス描写に関しても夢枕獏の足元にも及ばないので正直不要。作者には申し訳ないが。

川端裕人「銀河のワールドカップ」(集英社)
……純度の高いサッカー小説。同じく純度の高い金融小説「リスクテイカー」(文春文庫)や、オンラインゲームとネットワークを題材にした小説「The S.O.U.P.」(角川文庫)を過去に読んでいて、全く異なる題材を水準以上のレベルで出してくる腕前に毎回うなるのだが、一方で毎回どこか腑に落ちないものを感じる。読後感は悪くないのだが、何だかだまされたような感じを受けるのだ。それがどこにあるのか、今回もわからず。読ませるがストーリーテリングがうまいとは感じない。観念性の極端な希薄さが薄気味悪いのか。どうでもいいが、「The S.O.U.P.」の解説を石田衣良に書かせたのは編集者すごい。石田もよく受けたと思う。「リスクテイカー」と「波のうえの魔術師」(徳間文庫)、「The S.O.U.P.」と「アキハバラ@DEEP」(文春文庫)は解説で石田本人も書いているように題材が完全に重なっていて、しかも両作とも川端のそれの方が上だからだ。笑い。

井家上隆幸・永江朗・安原顕「超激辛爆笑鼎談・「出版」に未来はあるか?―中央公論買収の裏側、三一書房ロックアウトの真相」(編書房)
……再読。初版が1999年6月だからすでに8年が経過しているが、議論の中身は古びていない。今読んでも十分に楽しめる内容になっている。安原顕が故人となり、もはや同じメンバーで同様の本が作られることがないのは些か残念。結論として出版の未来は再販制撤廃しかない、となっているがいまのところその気配はない。外圧がかかる可能性も低く、自浄能力も皆無となるとこれはもう本当に絶望的だ。まあ新刊を読まなければいいだけの話だが。

安原顕・編「ジャンル別文庫本ベスト1000」(学研M文庫)
……上記の本を読んでいたら古書店で見かけ何となく買って何となく眺めた。最初、なんで学研M文庫? と奇妙に思ったら、安原が一時学研に籍を置いていたときのことを楽しげに語るくだりが上記対談にありなるほどと思った次第。ジャンル別、ノンジャンルで1人の選者がベスト50を選んだものを21編収録。打ち合わせをして選んでいるわけではないので微妙に重複があるため安原が1編追加したものか。2000年刊、こうしたベストものでも微妙に時代は出るものですな。特に翻訳ものではまだ未訳のせいで躊躇して採った作家があったり(例えばSFのグレッグ・イーガンは原書が採られていたり)、井口俊英「告白」(新潮文庫)のようなその時期旬の本が入っていたり。ノンフィクション・ルポルタージュがジャンルとして立てられていないのはちょっと残念。伝記は杉森久英のものを1冊は入れて欲しかったかな。コミックはちょっと時代を考えても微妙。ただ、そういったことを考えながら眺めるのが面白い1冊ではある。

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この記事へのコメント
おお・・なんだか私も再読したくなります^^;

北村薫「円紫師匠と私」は図書館で単行本を、文庫になってから買いました(ほとんどそのパターンですが・・金無いので)良いですよね〜

高千穂遥の「魔道神話」はリアルタイムで読んでいたっけw
今は氏の本は何も手元にありません^^;
当時はあの手の話を書いてる人が少なかったのですよ・・夢枕、菊池以前だし・・
夢枕獏は追っかけてます・・数少ない単行本で買う作家です♪

川端裕人も追っかけてる作家の1人で新作が出る度に図書館で、文庫になると購入してます。なんか説明の出来ない良さが・・
石田衣良については同感です(苦笑)
そっちも大半読みましたが・・石田衣良はIWGP以外は書かないほうが良いと強く思っております。。「アキハバラ@DEEP」は最後に愕然としました・・おいおい、そんな馬鹿話だったんか・・川端さんを見習え!って突っ込みながら・・

今の私の一押しは古川日出男ですねえ〜
文庫になるのが待ちきれず単行本購入作家に昇格しました。。


ううむ・・衰弱堂さんにみたいに感想なんて書けるものでは無いので^^;
こんなところで失礼。。

Posted by karasu at 2007年10月14日 10:29
週末も調子がいまいちで梅原克文「カムナビ(上・下)」を読み、なぜか吉本隆明「共同幻想論」を手にとり、あ、これは柳田国男「遠野物語」を先に読まなきゃいけないんだったと、ちびちび「遠野物語」を読み始めました。

karasuさん:

このエントリー、みんな流すと思ったら……見事に本がかぶりまくってますね。微笑。

エントリーで取り上げた作家は、北村を除くと実はあまり読んでいません。北村も「盤上の敵」以降の作品を残してます。山本周五郎賞の選考委員である彼をしきりに直木賞にノミネートさせて落としてる人は相当意地が悪いですよね。笑い。

夢枕・菊池以前の日本の伝記ロマンは文中にあげた半村良や荒巻義雄あたりが相当仕事をしている感じかと。

石田衣良は池袋住人にもかかわらずIWGPを読んでません。苦笑。石田にせよ、川端にせよ、どちらかというと「金融小説」とか「ネット小説」という面で読んだ感じ。「The S.O.U.P.」は類作の中では一番素材を掘り込んで奥行きがあるようにも思うんですが、微妙に涼元悠一「青猫の街」(新潮社)の方が起伏に富んでいたような記憶が。

古川日出男、読んでないです……。

そもそも最近小説はほとんど読んでいなくて、買うのはせいぜい講談社、徳間のノベルス系くらい。夢枕獏も「新・飢狼伝」を待つのみ。引き続き年1冊なのか……。彼はシリーズ増やしすぎて年1冊しか出ないの多すぎるみたいですけど。笑い。
Posted by 衰弱堂 at 2007年10月14日 23:26
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