ネッガネガにしてやんよ

essay 】 2007 / 10 / 06
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン「発想する会社!」(鈴木主税、秀岡尚子・訳、早川書房)によって日本でも知られるところとなった異色の会社IDEOの存在や、コーチング、ファシリテーションといった概念の普及、あるいはイントラネットやナレッジマネジメント、社内blogなどのツールがクローズアップされるにつれ、次第にコーポレートカルチャーと真剣に向き合う人が増えてきた。そのこと自体はぼくは歓迎すべき風潮だと思う。

しかし一方で、コーポレートカルチャーを、いつでも着替えられるモードのファッションか何かのように軽く考えている人があまりに多いんじゃないか、という危惧も持っている。Life is beautiful「会社のカルチャー作りの大切さ」というエントリーを読んでいてふと思ったので、書いておこう。

 誰かが新しいアイデアを出すと、すかさず「それは○○が過去にやって失敗したよ」「それはあまりにも常識はずれだ」「もう少し良く考えてから提案すれば」と水を差すような発言ばかりする人がいる。経営者として意識すべきなのは、その手の発言がどのくらい企業カルチャーにダメージを与えるかを強く意識することである。そんなネガティブな発言ばかりを言う人が大きな顔をしていられる会社ではイノベーションは起こらない。

 イノベーションを重視するIDEOでは、ブレストのときはもちろん、普段から「新しいアイデアはどんなに斬新なものでも歓迎」というカルチャーを、経営陣だけでなく社員全員が共有している。「ミーティング中に水を差すような発言をした人にはボールを投げつけて良い」(IDEOの会議室には柔らかいボールが置いてある)というルールは、冗談のようだが実はカルチャー作りの上でとても重要な役割を果たしている。

Life is beautiful: 会社のカルチャー作りの大切さ


ここで書かれていることは大筋では間違っていない。しかしミスリードを誘う書き方だし、微妙に勘違いしているような気がする。

まずIDEOはブレストを重視するカルチャーを持っている、という前提を理解していないとこの話は正しく伝わらないんですよね。で、IDEOはブレストにおいてはアイデアの質より量を重視する。ブレストにおけるネガティブな発言はそこからはじまる批判や論争により時間の浪費やエネルギーの枯渇を招く結果、アウトプットを減少させる。ゆえに冗談のようなルールを作ってまでそれを回避しようとするのであって、全てのミーティングがそうしたルールに従っているとは思えない。

だいたいが、「それは○○が過去にやって失敗したよ」という発言をネガティブだと考えている点が逆に極めてネガティブなんだよね。これは貴重なナレッジであって、ミーティングにおいては極めて重視すべきものだし、後者2つの為にする発言とは明確に区別すべきです。

そもそもIDEOのブレストは明確なルールが定められた一つの『ゲーム』であって、そんじょそこらのロクデナシ企業がやる、形だけのブレストと一緒にしてもらっちゃ困るんですよ。カルチャーとしておかしなことになるから。

IDEOのケーススタディやコーチング、ファシリテーションを中途半端にかじってアメリカ特有のポジティブシンキングみたいなものとミックスすると、日本では根性論と非常に相性がよろしいんですよね。ミーティングで根拠のある反論が「ネガティブだ」、「なんでそう後ろ向きなんだ」、「お前はやる気ないのか」みたいな無根拠な言葉で一刀両断されるケース、みなさん身に覚えがありませんか? 笑い。

ない、といわれるとそれまでなんですが、ぼくは割と「ネガティブ」のレッテルを貼られることが多いんですよ。まあこのエントリー自体がネガティブだし。笑い。

ただ、正直に申しあげますとですね、あまりに知的に怠慢で話にならないレベルのプランニングを、ぼくは個人的名誉のためにも職業倫理の観点からも蹴らざるを得ないと考えているわけです。一つのアイデアに対して、それを脳内で実装イメージに展開して大雑把にステークホルダー分析とシステム上の整合性と顧客の着地点をチェックするのなんて3分もあれば十分できるわけです。そのレベルでボロが出るようなものは、ブレスト以外じゃ用なしでしょ。そこでダメ出しすることを「ネガティブ」ととらえる経営者や管理職は意外に多いんじゃないかと。顧客の立場に立ってネガティブな発言ばかりを言う人が抑圧される会社ではイノベーション以前に何も実現しないとぼくは思っています。

一般論で言えば日本人はネガティブな意見に対してメンツに拘泥しすぎるのがコーポレートカルチャーの定着の上で大きな障害になるんですよね。上司に反論するのも顔色伺いながら、だとか。ばかばかしい。一人一人の人格を尊重した上で、忌憚のない意見を激しくぶつけ合って、顧客にとって最高の答えを導き出せる風土、それがぼくの求めるコーポレートカルチャーであって、言葉尻をとらえて「短絡的だ」とか「ネガティブだ」とかで発言を抑圧するようなカルチャーは欲しくないんです。

経営者が意識すべきなのは、どんな言葉であれ、社員が真剣にその言葉を発しているか、であって、おためごかしのポジティブシンキングに「おお、我が社にはコーポレートカルチャーが根付いているな」とか勘違いするようなバカ社長の下ではぼくは働きたくないなあ。笑い。

ああ、あと「ごちゃごちゃ話しているよりもまずは作る」ってのもぼくが嫌いな考え方。いや、ほんとにすごいエンジニアがいることをぼくは知ってます。某社のK副社長とか。あの人のレベルだと、「まずは作る」の方が間違いなく結果的にいい方向に出ると思う。でも、「無知の知を知れ」と思わずアドバイスしたくなるような方にこれをやられるとほんと迷惑なんですよね。それに、ブレストってごちゃごちゃ話すことですよ? ブレストは必要なの? 必要ないの? え、CM行く? それじゃCM。

って、それが落ちかよ。苦笑。






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