Web2.0? まずはクルートレインマニフェストを読み返すんだ

marketing 】 2007 / 09 / 03
ここのところ、Web2.0について読んだり書いたりしながら、サイボウズへの違和感をあからさまにしたり、はてなブックマークに色々コメントをつけたりしていると、今日までの数年間のバイラルマーケティングだのblogマーケティングだのナントカ2.0だのといった流れの源にあるのはクルートレインマニフェストなんじゃないのか、とふと思い至った。

1999年、「地球の人々へ……("people of earth...")」の書き出しではじまる、4人の「地球人」によってインターネットで公開された、前文と95のテーゼからなる、これまでのビジネスの終わりを高らかに告げる宣言。それが「クルートレイン宣言」("the cluetrain manifesto")だ。

「クルートレイン宣言」は一部の熱狂的な支持を受け、各国語に翻訳されインターネット上に広がっていった。当時ぼくは日本語訳でこの宣言と95のテーゼを読んで、ニコラス・ネグロポンテの「ビーイング・デジタル」を読んだときと同じような衝撃を受けた。

これは、圧倒的に正しい。ぼくはその頃、確か今に続くマーケターとしてのキャリアを始めたばかりだったように思う。しかし、ぼくはこの宣言を、マーケターとしてではなく、一人の消費者として、興奮をもって受け入れた。そう、半ば、夢物語として。彼らが生き生きと描き出した企業と市場と消費者の関係は、当時のぼくにはまったく見出すことができなかったからだ。

「クルートレイン宣言」の著された1999年を、ばるぼら「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」(翔泳社)などで見ると、日本のインターネット史に残る2つの大きな出来事が見出される。そう、「2ちゃんねるの誕生」と「東芝クレーマー事件」だ。今日のブログ時代の先駆けともいうべきレンタル日記サービス「さるさる日記」がはじまったのもこの年。翌2000年には初めて日本で「Weblog」という言葉が紹介され、カカクコムは新口コミ掲示板サービスを開始とある。

ちょうど、インターネットを軸に、<企業→市場→消費者>という強固で不可逆なバリューチェーンがほどけようとしていた時期に、「クルートレイン宣言」は、そんなものはまやかしだ、と強く指摘した。

われわれは自由にコネクトし自由に話し合うことができる、企業はなぜ、いつも合成音声のようにわれわれに話しかけるのか、人として話してくれ、そして企業の中のひとたちも、一人一人がひととして語り合い、価値を高めるんだ、それができない企業は死ぬ、と告げた。しかしそれは、あまりにも早過ぎる死刑宣告だった。

"the cluetrain manifesto"は翌年、これを受けて書かれたいくつかのテキストを加えて書籍化され、日本でも2001年に「これまでのビジネスのやり方は終わりだ」(倉骨彰・訳、日本経済新聞社)の邦題(原著の副題である"The end of business as usual"から取られている)で翻訳版が刊行された。

そして、忘れ去られた。

blogブームが訪れ、SNSで人々が語り合い、@cosmeのようなクチコミサイトが脚光を浴び、Tim O'Reillyが "What Is Web 2.0"をまとめ、よってたかって2.0の大合唱が始まった。それでもみんな、クルートレインマニフェストのことを思い出そうとしない。なぜだ?

そう思いつつ検索をしてみたら、富士通総研の湯川抗氏がすでに「Web2.0に戸惑う大企業(3)――社員に市場との対話の機会を」というコラムでまさにWeb2.0とクルートレインマニフェストをからめて語っていた。
クリストファー・ロック氏(マーケティングコンサルタント、「ゴンゾー・マーケティング」の著者)らが1999年に発表し、当時話題を呼んだ“The ClueTrain Manifesto”は、いまの時代にこそ、示唆に富む。ここに書かれた「市場は対話である」で始まる95のテーゼは、進化するインターネットの時代における、企業に対するユーザーの要望をまさしく的確に代弁している。

 例えば、ここでうたわれている「市場は広報宣伝担当と話したいのではない。その企業のファイアウォールの向こう側でおこっている会話に参加したいのである」「あなたがた(企業)には、ウォールストリート・ジャーナルの記者1人に対するのと同じくらい真剣にわたしたち5000万人のことを考えてほしい」という記述に賛同する人は多いだろう。
当のティム・オライリーでさえ結び付けていなかったクルートレインマニフェストを極めて正当に評価したこのコラムはさすがインターネットビジネスの黎明期から大きな働きをしてきた湯川氏ならでは、と脱帽した。すでになくなってしまったと思ったらまだ残っていた「サイバービジネスの法則集」は、その名前からして歴史を感じさせるものだが、湯川氏とネットエイジのスタートアップメンバーを中心に作られた、アメリカの最新のインターネット事情を伝える、1990年代には数少ない情報源の一つだった。

そんなわけで、ぼくは「市場は対話である」ではじまる95のテーゼを読み返しはじめた。なんということだ! ここ数ヶ月の間、ぼくが必死になって考え書き記していたことのほとんどが、すでに95のテーゼの中に書かれているじゃないか! Webマーケティングについても、イントラネットのあるべき姿についても。まるで釈迦の掌で踊らされていたようなものだ。

今宵、Web2.0について考えているすべての人に、このテーゼを送りたい。
94.伝統的な企業にとっては、情報化された対話というのは複雑に見え、複雑に聞こえるのかもしれない。が、わたしたちはそのような企業より早く組織化してきている。わたしたちにはより優れた道具と、より新しいアイディアがあり、わたしたちの成長を妨げるような規則は何もない。

さあ、もう一度クルートレインマニフェストを読み返そう。






Comment(0) | TrackBack(1) | marketing

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

書評:「これまでのビジネスのやり方は終わりだ」〜あなたの会社を絶滅恐竜にしない95の法則
Excerpt: 〓 今現実がうねっている、その原点がここにあった 〓 共著:リック・レバイン、ドク・サールズ、クリストファー・ロック、デビッド・ワインバーガー  それはつまり、この本は2001年に出版されたのにもかか..
Weblog: アイフォニア(iPhoner)にはこれがいい!
Tracked: 2010-04-20 00:38
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。