山本弘「神は沈黙せず(上・下)」(角川文庫)

books 】 2007 / 05 / 15
割と不真面目な大学生だったがゆえに、ゼミなるものにはほとんど顔を出した記憶がない。いったい、何をしていたのだろうか。そもそもが、では社会人としては真面目だったのかといわれれば自然と目は泳ぐわけで、結局おまえは人として不真面目だろ、ということになる。まったくもってありがたくない話だな。

そんなぼくが数回とはいえ唯一出席したのが確か現代英米哲学のゼミで、ジョン・サール「言語行為(Speech Acts)」(坂本百大+土屋俊・訳、勁草書房)の原書がテキストだった。哲学史的にいえば、サールはイギリスのジョン・オースティンからの流れに連なる日常言語学派の哲学者。つまらなかったなあ。もうすっかり忘れてしまったのだけれど、発話行為を意味指示的なそれと行為遂行的なそれに分けたりとか。そんな帰納的なアプローチの彼が、後にデリダと論争を繰り広げるというのもわかるようなわからないような。まあ、そもそも当時はジョン・サールよりジョン・バースの方がぼくの中では大きかったんだ、ということにしておきましょうよ。って、どうでもいいですな。

山本弘「神は沈黙せず(上・下)」(角川文庫)の冒頭に《サールの中国人》という言葉が出てくる。

ああ、このサールはあのサールなのね、と思い、そういえば「言語行為」の訳者解説にサールがその後人工知能に関する緒論を展開しているといった話が出ていたなとふと思い出した。

子供の頃、事故により両親を失った兄妹がそれぞれ神を追い求めるうちに顕わになる神の姿を描こうとする大作。ともかく、超常現象に関する小ネタが盛りだくさんでその情報量に圧倒されるが、登場人物がいずれもステロタイプに過ぎ、物語としての深みに欠けるある意味では小説としかいいようがない1作。上巻までの展開は圧巻なのだが、同様のテーマを扱った山田正紀のデビュー作「神狩り」(早川文庫)に比べると、いかんせんストーリーラインが痩せている。個別の現象をいかにひとつの焦点に向かって収斂させていくかが楽しめないと、退屈かもしれない。あえて薦めず。

タグ:Book review novel





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