スマートフォンのシェアはどう推移するか

marketing 】 2011 / 10 / 09

 衰弱堂覚書のGoogleアナリティクスのデータを見ていると、どうも「フィーチャーフォン スマートフォン シェア」というキーフレーズで検索して、「フィーチャーフォンとスマートフォン」というポストを見に来られる方がいくらかいるようです。

 当該ポストはあくまでフィーチャーフォンとスマートフォンを取り巻く状況をかんたんに説明するために2次引用の発言しか引いていないのでお役に立てないかと思います。よってとりあえず、このエントリにリサーチデータ等をまとめてみた次第。


市場動向に関する情報を探すかんたんな方法

 まず最初に一般論としてマーケットシェアなど市場動向に関する情報をかき集めるときの一番手っ取り早い方法を。それは国立国会図書館のWebサイトにあるリサーチ・ナビで検索してみること。各省庁の統計データ、民間のリサーチ会社のデータへのリンクのほか、関連書籍の紹介もあるので一覧性が高いです(見に行ったらたまたまメンテナンス中でしばらく待った)。

 例えば携帯電話について調べる場合は「情報通信機器産業(パソコン・携帯電話など)の調べ方」に主要統計資料、主要情報紙誌、主要調査レポート、主要インターネット情報源などがまとめられたページが用意されています。

携帯電話の市場動向に関するデータ

 まず、携帯電話市場全体の動向を知るためには社団法人 電気通信事業者協会(TCA)「携帯電話・PHS契約数」を確認するのがよいと思います。毎月末時点でのキャリア別の契約台数と純増数のほか、iモードなど携帯IP接続サービスの契約台数に関するデータが翌月第5営業日をめどに公開されます。なお、このデータは毎月ケータイWatchが月初に記事(現在最新の記事は「9月の携帯・PHS契約数はソフトバンクが1位、auはMNPで転入超に」)として概要をまとめているものの出典です。

 2011年9月末時点で携帯電話の契約数は123,129千件。うち携帯IP接続サービス契約数は99,675千件。これらは契約ベースなので1人複数台契約している件数も含まれ、契約者数を表す数字ではありません。

 携帯電話の利用状況については、総務省の情報通信統計データベースに公開されている「通信利用動向調査(世帯編)」があります。pdfファイルの報告書とexcelファイルの統計表が公開されており、携帯電話の利用率、携帯電話からのインターネット利用率のデータが含まれています。

 携帯電話(PHS・PDAを含む)からのインターネット利用率は2010年(平成22年)末時点で59.6%。12歳以下と60歳以上で低く、世帯年収の低い層の利用率が低くなっています。ただし高齢層の利用は対2008年末で見ると若年層がほぼ横ばいなのに比べ、60歳以上の年齢階層はいずれも伸びており、今後高齢化が進み既存利用者が高齢層へスライドして利用率は引き続き伸長するものと思われます。

 その他のインターネット人口に関する統計情報は財団法人インターネット協会「インターネット統計情報」にリンクがあります。


スマートフォンの市場動向に関するデータ

 携帯電話市場におけるスマートフォンのシェアの推移に関する予測データは、ぼくの知る限りでは、マーケティングリサーチの老舗である矢野経済研究所と、IT分野に特化してリサーチを行なっているMM総研のものが一次データとして用いられることが多いと思います。両社とも詳細データを含む調査報告書は有料ですが、調査概要をニュースリリースとして公開しており、市場の動向を把握するにはこのリリースを確認するだけでも十分です。

 矢野経済研究所は年1回スマートフォン市場の調査を行なっており、最新のレポートは2011年7月の「スマートフォン市場に関する調査結果 2011」にサマリと、より詳しい情報が掲載されたpdfファイルが公開されています。

 矢野経済研究所の調査はキャリアや端末メーカがデータを利用することを想定したものなのか、調査と予測は出荷台数ベースで出されています。国内スマートフォン市場は各キャリアによる端末の導入が進んだ2010年度に大きく拡大、出荷台数は850万8千台(対前年度比391.2%)となり、2011年度には2,131万台(対前年度比250.5%)となりフィーチャーフォンの出荷台数を上回り国内の携帯電話出荷台数(タブレット、モバイルデータ端末を含む)の過半数を占めると予測しています。

 また、国内メーカによるスマートフォン端末の海外市場シェア予測をする際のバックデータとなる世界のスマートフォン市場規模の推移の予測も出しており、2010年の世界のスマートフォン出荷台数2億9,593万6千台(携帯電話全体(PHS、デジタルフォトフレーム、タブレットPC等は含まず)で13億2,983万台、スマートフォンのシェア22.3%)から、2017年では14億8,479万台(同20億8,750万台、スマートフォンのシェア71.1%)まで成長すると予測しています。

 なお、世界シェアに関するリサーチはIDC、Gartner、comScoreなど海外の調査会社のリリースが記事として流れることがあります。きちんとウォッチしていないのですべてのソースを明示できないのですが、ITmediaのキーワード「携帯電話市場」の検索結果や、衣袋宏美さん(@hibukuro)のブログ「Insight for WebAnalytics」の「スマートフォン」の検索結果からソースを探すとよいのではないでしょうか。

 MM総研は毎年だいたい上半期と下半期にスマートフォンの市場規模予測を公表しており、最新のレポートは2011年7月の「スマートフォン市場規模の推移・予測(11年7月)」としてニュースリリースのかたちで概要を掲載しています。

 出荷台数ベースの数字は矢野経済研究所のものとほぼ同様で、2010年度のスマートフォン出荷台数は855万台(対前年度比370%)、総出荷台数に対するスマートフォンのシェアは22.7%。2011年度にはこれが2,367万台まで急伸し総出荷台数の60.1%と単年度ではじめてスマートフォンの出荷台数が過半数を超えるものと予測、矢野経済研究所よりもポジティブに見ています。

 またMM総研では契約数ベースの数値も出しており、2011年3月末(なぜ年度表記しないのかは不明)のスマートフォン契約数は955万台で端末総契約数1億912万件に対するシェアは8.8%(ちなみに端末総契約数は先述のTCAの統計で出ている2011年3月末の契約数1億1,954万件とは一致しない点に注意)。これが2012年3月末に2,598万件(シェア23.1%)、2015年3月末には6,137万件(シェア50.9%)となり、2014年度末に契約ベースでもスマートフォンがフィーチャーフォンのシェアを上回る、と予測しています。

 スマートフォンのOS別契約数シェアは2011年3月末時点でiOS:474万件(49.6%)、Android:386万件(40.4%)、Windows:71万件(7.4%)。「今後もiPhoneがソフトバンク1社提供のみ」の前提付きで2011年度以降、Androidのシェアが70%を超えるという予測を出しているのがなかなか趣深いところ。auのiPhone投入を踏まえ、12月に新たな予測が出されると思います。

 スマートフォンの国内市場動向については、この他にもシード・プランニング「2011-2012年版 スマートフォン/タブレットの市場展望」という調査を2011年7月に公表していますが、概要に掲載されている情報が少ないため使いにくいです。数字だけ拾って上記の2社と比較すると、販売台数で2010年度770万台(対前年度比3.2倍)、2011年度に1720万台に拡大。2社に比べ数字が小さめなのは出荷ベースと販売ベースの違いでしょうか。ただ、2012年度2,200万台で全体の5割に達するという予測をしており、他社より1年遅いと見ているのではないでしょうか。スマートフォン累積契約数(加入数)は、2010年度末1,060万から2011年度末2,400万、2012年度末4,000万、2016年度末7,000万の予測で、2016年度末に全体の5割に到達という予測をしており、こちらもMM総研より2年遅れのコンサバティブな見方をしているようです。

 なお、マーケットシェアだけでなく、実際のスマートフォンユーザの利用動向等を知りたい場合は、IMJモバイルがインターネットリサーチで1,000サンプル程度の規模により独自の調査レポートを定期的に公表しています。


スマートフォンは国内シェア過半数を占めるのか?

 最後に蛇足ですが、ぼくの個人的な見解。このエントリの元になった「フィーチャーフォンとスマートフォン」でも触れたように、個人的にはスマートフォンのシェアがこれほど拡大するとはとうてい信じがたいんですが。ほんのわずかな期間、docomo N-06Aを使った経験だけでも日本のフィーチャーフォンの作り込みにはいい意味での驚きを感じました。多機能、コンパクト、堅牢、テンキーによるユーザビリティ。いまフィーチャーフォンに満足しているユーザがスマートフォンに乗り換えるべき理由は「大画面」くらいしか思い当たりません。しかし、大画面であることは携帯性とトレードオフになっていますよね。フィーチャーフォンをジーンズの尻ポケットから取り出す青年をよく見かける印象があるんですが、スマートフォンはサイズ的に無理がないか。さらに瑣末なことを言えば、スマートフォンはストラップホールがない機種が多いんですが、お気に入りのストラップを鈴なりに付けている女性たちはどうするんだろうか。笑い。

 ではスマートフォンの大画面が活用されているのか、といえば、IMJモバイルの「スマートフォンユーザー動向定点観測 2011」pdfファイルで「スマートフォンでしていること(複数回答)」という質問項目の回答上位を見ると、50%を超えているのは

  • 写真を撮る(85.5%)
  • 目的地までの地図を調べる(78.6%)
  • 天気予報をチェックする(74.5%)
  • 電卓を利用する(72.0%)
  • 商品情報を調べる(63.5%)
  • 店舗情報を調べる(61.9%)
  • 動画(YouTubeなど)を見る(59.7%)
  • Twitterを見る(50.6%)

といった結果で、そのほとんどはフィーチャーフォンでできることなんですよね。商品情報の閲覧と動画の閲覧でスマートフォンにメリットがありそう、といった感じ。しかしそれを理由にスマートフォンに乗り換えるかといえばそうでもないかと。

 スマートフォンに関する情報が大量に露出することでムード的にそちらに向かっている、という気はします。一方で国内端末メーカが、ほぼすべての人にフィーチャーフォンが行き渡り、インセンティブの削減で端末の小売価格が上昇し一つの端末を使い続ける期間が長くなることで買い替え需要も細る中、日本向けに特化したフィーチャーフォンを作り続けるというビジネス自体に限界がきたのはなんとなく理解できるところ。ドコモの初期のiモード端末で人気のあったNECが2009年にカシオ計算機、日立製作所と携帯電話端末事業を統合したのもそうした市場の先行きが細っていく中でスケールメリットを出すためのやむを得ぬ選択だったのではないかと。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへ、という流れは端末メーカとしては世界市場を視野に入れてものづくりを行う土壌を用意してくれるという点で歓迎すべきなのでしょう。先月、シャープがフランステレコム向けに「AQUOS PHONE」を納入、というニュースリリースが流れましたが、こうしたケースは今後も増えていくのだと思います。そして、より広い市場向けに端末が投入され、スケールメリットを通じていくらかでも端末の低価格化が進むとすれば、あるいは端末のさらなる多様化が実現するとすれば、スマートフォンなしではやっていけないぼくとしては別に文句はないのですが。

 ぼくはなんであれ文章を読むのが好きで、読むものがなければ薬の成分表でも読むような人間なので、大画面が必要なんです。画面内に表示してくれる文字数は多い方がいい。でも、みんなそんなにテキスト読むんですかね? 動画見放題なんですかね? メールのような短文をやり取りする人には、大画面化と引き換えにテンキーが失われるデメリットの方が、大きい。だから、別に無理してスマートフォンを使う必要はないと思うし、実際にユーザの過半数がスマートフォンを使うような状況を想像しづらいんだけれどなあ。

 ありそうなのは、限られた開発コストがスマートフォンに集中的に投下された結果としてフィーチャーフォンの進化が止まり、ユーザの選択肢がスマートフォン一択になるようなケース。特にカメラ機能において革新的な差別化が起こった場合は、徐々にユーザのスマートフォンへの移行が進む可能性は高まると思います。その場合、通話とメールのみ使用するユーザ向けにいまの「らくらくホン」のような形で限られた機種が提供されるのかな。







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