いったいGoogleにはBuzzなんて必要だったんだろうか

network 】 2010 / 02 / 15
 ごく一部の方には待望の(未検証)Googleバズが2/10以降、順次公開された。Gmailの機能拡張のような形を取り、Gmailから呼び出す形で利用できる。

 メールアドレスに紐づいたメッセンジャーサービスという意味では、ICQ以降のIMをクライアントベースからWebベースに置き換えた、といった感じのツールに見えなくもない。

 最初に驚いたのは、Google Profileの設定の関係でぼくがGmailで設定していた英文表記のリアルネームがそのまま使われたこと。

 ぼくはいまGmailをメインのメールアカウントで使っている(が、Webインターフェースはほとんど使用せず、Thunderbird経由で送受信しており、同じくThunderbirdのアドオンであるLightningProvider for Google CalenderでThunderbird経由でスケジュール管理をし、T-01AにはPOsyncで取り込んでいる)。そのこと自体は大きな問題ではないのかもしれない。例えばぼくの英文表記のリアルネームを検索すると、最小限の公開情報を登録したFacebookのプロフィールページを見つけることができる。

 個人的に気持ち悪さを感じるのは、Google ProfileをベースにGmailとGoogleバズにリアルネームを紐付けるか、Gmailアカウントを紐付ける形で公開される仕様になっているようだったことだ。これは情報公開レベルの設定に関していえば、先行するソーシャル・メディア・サービスに比べるとあまりにも貧弱に思えた。貧弱、というよりもむしろ、試しに使ってみようと思うにはあまりにも複雑なアイデンティティ管理を前に、それでもまずは使ってみようと、えいや!でBuzzってみたらノーガードで大量のリアルネームやアカウントがGoogle Map上にマッピングされてしまうというありさま。リア充からほどとおい衰弱堂に冷や水ぶっかけるような仕様に思わず涙ぐみそうになりました。


私は衰弱堂である、ゆえに衰弱堂あり
 長くにわかり、日本では実名主義と匿名主義を巡る論争が繰り返し起こっている。これについてぼくは一定の条件を前提に後者を支持している。オンライン上で一度つけられた新しい自分の名前は、それ自体で何らかの価値を持ちうることをぼくは信じている。たとえそれが、「衰弱堂」なんていう、ネガティブでふざけた名前だとしても、ぼくはそれなりに愛着を持っており、あえてこの「衰弱堂」を不特定多数のネットユーザに対してリアルネームと結びつける形で認知してほしいとは思っていない。その名前に与えられるもの、その名前においてパブリケーションされる言葉がクズ同然の評価を受けてしかるべきだとしても、そのことの責任は「衰弱堂」としての一貫した発言を通じて背負うべきものと考えている。

 そして、クズ同然の衰弱堂の発言を無責任だと糾弾する人がいれば、できうる限りクズ同然の衰弱堂の名の下にその人とコミュニケーションしていくしかないだろうとも思っているわけです。たぶん途中で面倒になって投げ出すとは思いますが。

 もはやぼくはこのオンライン上の名前を捨てて、次々に名前を変えていくことはできない。ぼくはこの衰弱堂の名の下に、もう10年以上同じくリアルネームを知ることもない何人もの人とネットを通じてコミュニケーションを続けてきた。おそらくは、その人数はリアルネームで知り合った人たちの数とそう変わらなかったりするわけで、そうした人たちに今さら衰弱堂のリアルネームは、なんてことを触れて回るのも野暮な感じがしなくもない。別にリアルネームの世界で華々しく活躍しているというわけでもないしね。

 もちろん、すべての人がぼくのリアルネームと衰弱堂なる奇怪な名前とを結び付けていないわけではなく、例えばa2iの一部の方の中には衰弱堂が誰かをご存知の方もいて、懇親会で普通に「衰弱堂さん」とか呼ばれてこれはこれで名状しがたい思いに駆られることがなくはないんですが、基本悪くはないんですよね。それはぼくが自分の判断においてそうあることを望み、そうなったことであって、少なくともGoogleからそれを強制されるという事態にはぼくは強い違和感を覚えずにはいられないわけです。

で、Waveはどうなったの?
 そして一番大きな疑問を感じるのは「Google Wave」はどこいっちゃったの? ということ。あれはほんとうに衝撃的なプロダクトでした。恥ずかしながら、ログインして直感でまったく操作できなかったWebアプリケーションはWaveが初めてでしたよ。
 しかし、BuzzをGmailの機能として実装するならば、── わからないまま言ってしまうけれども ── むしろWaveに統合する形の方が筋がよくないですか?

 ぼくは個人的にGmailのWebインターフェースはそれほど優れていないと考えています。テキストだらけの画面にテキスト広告が挿入され、Google Profileの変更をしようにもどこから行けばいいのかわからない。既存のメールクライアント経由で利用するほうが振り分け設定をはじめずっと使いやすい古い人間でございます。そこになんかBuzzとか追加されてるし。だから、GmailのWebインターフェースなんてみてないんだから。どう設定するとどういう名前になるのかさっぱりわからなかったし(何度かGoogle Profileの設定を変更したが、見た目上リアルネームの表示が変更されず、最後はリアルネームを削除した)。

 しかし、ニックネームで使用する場合も、このニックネームがそのままGmailのアカウントに紐づいているため、全世界に向かってばんばんBuzzっていくのは気後れします。カモンspam! みたいなノーガード戦法になってないか、これ? とか思ったり。

 なぜWaveに統合して、Buzz自体を個別のインターフェースから閲覧・投稿するような方向にいかなかったのかがぼくにはよくわかりません。たぶんWaveを理解していないからだとは思いますが。

これはGoogleが作るべきものだったのだろうか?
 そして最も大きな疑問。Googleバズは、ほんとうにGoogleが作るべきプロダクトだったんでしょうか? Googleはとにかく、ソーシャルメディアの開発に関してはほかに比べて負け続けている印象が強いですよね。SNSのorkut?(ブラジルでブレイク中とか)、3DアバターサービスのLively?(2008/11/19に終了発表)、他にも何かあるのかな。

 上記のGoogle BlogにおけるLively撤退発表のエントリの中にこんな一節があります。
"It has been a tough decision, but we want to ensure that we prioritize our resources and focus more on our core search, ads and apps business."

「これは難しい判断だったが、我々はリソースの確保と集中をこれまで以上に優先的にコアであるサーチ、広告、Webアプリケーションビジネスに振り向けたい」(衰弱堂訳)

Official Google Blog: Lively no more (Posted by The Lively Team)
 ここから1年余り、Twitterに代表されるソーシャルメディアの台頭は事業者・エンドユーザの姿勢に大きな変化を与えていることはたぶん言うまでもないだろう。けれど、やはりぼくはGoogleがここに出てくるというのは得策ではない気がしている。

 すでに小飼弾氏が404 Blog Not Foundにおいて「Google Buzz がただの buzz で終わる(かも知れない)理由」というエントリを公開しており、個人的になんだか納得させられた。ここでは引かないので上記のエントリに目を通していただければと思うが、ぼく自身の邪推を付け加えると、Googleは世界中で飛び抜けたGeekを集めて企業規模を拡大しているがゆえに、彼らの作り出すプロダクトは次第に「インターネットユーザ」のエクスペリエンスとの乖離が大きくなっているのではないかという危惧がある。Google社内で、Sergey Brinをはじめとする人たちだけが使うのならそれでもいいのだろう。しかし、いったいGoogleバズをリリースするにあたってどれだけ一般ユーザのユーザビリティテストを行ったのだろうか?

いまGoogleがソーシャルメディアに向けて投入すべきサービス
 TwitterのTLからときどき他の人のGoogleバズを見ると結構使いこなしている人もいるようだ。でも、いまのところぼくは全く必要性を感じていない。Googleアカウントの理解のしにくさはぼくの手には負えない。

 では、GoogleはもしBuzzを投入しないのならば、何をすべきだったのだろうか。例えば、Googleの大規模なデータ処理能力を活用した、新しいソーシャルメディアクライアントならば、ぼくは喜んで使ったような気がする。

 TwitterはS/N比が低い、というのであれば、Follows/Followers/Favoritesのデータを元にTL上のTwitに評価を加え、何段階かの有用性を設定してTLを絞り込んで見せるUI。Follows/Followers/Favoritesのつながりやハッシュタグの使い方、ユーザのTwitの意味解析に基づき、近い発言をしているユーザを抽出してリコメンドとフォロー支援、Google ReaderやGoogle Friend Connectのユーザ、さまざまなSNSのユーザのうち公開設定されている者のTwitterアカウントを見つけ出してリコメンドする機能。これらはもうリコメンドではなく、いっそネット上の自分のメディアを登録すると勝手にフォロワーが増えて、評点が設定された一定以上のユーザの発言が自動的にTLを形成する、くらいまでやってもいいかもしれない。

 こんなことができるのは、Googleくらいしか思い浮かばない。Googleは、自らコミュニケーションのハブになろうとする必要はないんじゃないだろうか。コミュニケーションの増大に伴って増え続ける情報をどんな切り口で整理して見せるか、それこそがGoogleの最大の強みだと思う。







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