森恒二「ホーリーランド(8)」(白泉社)

comics 】 2004 / 12 / 15
しばらく雑記をさぼっていたら色々と書こうとおもっていることが貯まってきたのだけれど、それも少したつとまあいいかと思えてくるので、さして書こうと思っていたわけでもないことに気が付いてしまうわけです。ただ、書くべきことがないにも関わらず書くのがいまや正しい作法なのだと思わなくもないわけですが。

森恒二「ホーリーランド(8)」を発売日に購入し読了。

これまで全然目を通していなかった隔週刊の「ヤングアニマル」という雑誌に連載、聞いたことのない作者、一見軽そうで妙に暗い画風、これ絶対に手に取る要素のない作品だったのだけれど、芳林堂書店コミックプラザがレジ前平積みで紹介していた際に立ち読みして一気に引き込まれた。あまり関係ないけれど芳林堂書店コミックプラザはかなり目利きの店員がいるものと推察。平積みで結構思い切った作品を推していることが多くて、行くといつも楽しめる。向かいの芳林堂書店はいつの間にか閉鎖されてしまったけれど、がんばってほしいですな。

イジメに遭い学校でも家庭でも蔑みの視線を感じて居場所をなくし、自殺にも踏み切れない弱い主人公神代ユウが、ある日書店で目にしたボクシング入門に従って何もかもを忘れるために拳をひたすら振り続けるうちにたどり着いた"街"での友情と暴力を描くこれまでにない成長物語。

下北沢や吉祥寺といった若者の街のごく普通の昼と夜を舞台に、説得力をもって描かれる暴力は作者自身の痛みに満ちたエピソードや路上での格闘技術を巡る細かな解説のための饒舌と相まって、どこにもない、その場限りの『聖地』を生き生きと浮かび上がらせる。

「ホーリーランド」の新しさはおそらく、心やさしく底抜けに明るい不良たちを描く高橋ヒロシや肉体の限界に挑む格闘技者を描き続ける板垣恵介とは別の、若者が暴力を行使することの意味を問い続けるその葛藤までをも含めて描いてみせたところにあるような気がする。ユウのタイマン勝負に魅せられて集まる名もない不良の一人のようにもう少し見続けていきたい一作。

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