Webだけでいいんですか?/【漫談】怪しいマーケター衰弱堂 余話

marketing 】 2009 / 09 / 05
 ぼくはいま、たぶん少しの後ろめたさと自己弁護の気持ちからこのネタに取り組もうとしている。動機は不純だし、身分は怪しい。

 で、タイトルを「衰弱堂」にすべきなのか「衰弱瞳」にすべきなのか5分悩んだ。後者はあまりにネタとしてわかりにくい上に、一人称の表記をどうしたらいいのかわからなくなったのでやめた。苦笑。

 非常に回りくどいところから書きはじめているのだが、これを書き始めるまでの経緯もぼくなりに回りくどくはあるわけで、そのあたりはそういうものなのだと思っていただきたい。

 そもそもは「リアルアクセス解析」の小川さんがtwitterにはてブのマルチポストで投げたつぶやきを見て、Web担当者Forum「PVだけでいいんですか?/【漫画】Webマーケッター瞳 第1話」という記事を読んだのがはじまりだった、と。

 小川さんは「読んでいて恥ずかしい気分になるのは何故だろう(汗)。でもおもしろいので今後に期待!」とコメントしているのだけれど、ぼくはそれを個人的に提案を受ける側だからなのかな、と思いました。
 そして、この漫画で主人公として描かれている、提案する側で仕事をしているぼくとしては、「正直、Webコンサルティングがみんなこんな低レベルな仕事をしていると思われたらかなわないよ」というやりきれなさを感じたわけです。

 その勢いだけで当該記事のはてなブックマークに、
SuiJackDo [*WebAnalytics], [*ネタ], [これは微妙] プロポーザルのための事前調査もろくにせず、単純なビジネスプロセスも理解できずクライアントの言いなり。正直、こんなレベルでマーケターだのコンサルタントを名乗るとかありえない、としか……。
と殴り書いてみた、と。実に生産性がないことこの上ないといわれればまあそうですが。

 まあ、話はそこで終わったものだったはずなんですが、昨日これまたtwitterにて「Insight for WebAnalytics」衣袋さんのつぶやきムラカミ カヨさんという方が「Webアナリスト養成講座」の書評を書かれていると知って、衣袋さんの記事を見てみたら末尾に
知らなかったが、ムラカミさんは、ウェブ担当者フォーラムの「【漫画】Webマーケッター瞳」の原案、監修やっている。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2009/08/28/6324/

Insight for WebAnalytics: ムラカミ カヨさんが「Webアナリスト養成講座」の書評を書いてます
とあるではないか。むむむ……。そしてムラカミ カヨさんの「『Webマーケッター瞳』出足の評判」という記事についにたどりついてしまったわけです。
昨日から公開されましたが、なんだかんだいっても評判って気になりますね。あくまで感覚値ですが、現在私がわかっている範囲では8割は○で2割は×ってとこでしょうか。手前味噌ですが、比較的上々だと思います。

はてぶなどを見ると予想通りの突っ込みもあり、思わず苦笑してしまうコメントもありました。

「Webマーケッター瞳」出足の評判: 〜最後に笑う者〜by ムラカミ カヨ
 そうか……読まれてしまうものなのだなあ。なんだろうこの居心地の悪さは。昔、ゲームセンターでバーチャファイター2に熱中して1時間ほど続けてプレイした後に、何か間接的に暴力を振るったかのような後味の悪さに襲われたときと似ているような気がしなくもない。結果的にぼくはある意味でムラカミさんを面罵したような構図を描いてしまっているわけである。

 うーん、ムラカミさん、不快に思われたようでしたらごめんなさい。

 ただ、ぼくはあのコメントを削除する気はあまりなかったりするわけです。ムラカミさん個人に対して批判を加えているつもりもありませんし。たぶん、三立瞳さんがぼくの職場にいたら、やはり「コンサルタントを名乗るからにはもっと真剣に仕事してくれ」というと思います。が、かわいいので許してしまいそうな気もするな。駄目じゃん。苦笑。

 漫画という形で展開していく以上、作画の都合や編集の意向その他多くの制約はあり、相応のデフォルメがかかるのも当然でしょう。まず対立構造を作る、というのもあらゆるストーリーテリングの基本で、次回に向けて読者の興味を惹きつけるという点では成功していると思います。

 でまあ、そんなこんなであれこれ思いを巡らすうちに、「じゃあ、お前ならどうやるわけよ?」という内なる声が聞こえてきたわけです。衰弱堂! だめだ! それは何か邪悪なものだぞ! 耳を貸すんじゃない! いやいや、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……。

 そんなわけで、以下、怪しいマーケター衰弱堂による漫談をお届けいたします。お読みになる前にまずはWeb担当者Forum「PVだけでいいんですか?/【漫画】Webマーケッター瞳 第1話」にて予習をすませるように。
 ちなみにこちらは後出しなので圧倒的に有利になっているはずです。元ネタと比較されたい向きにはその点留意いただくべきかと。


あらすじ
 漫画の主人公、三立瞳さんは26歳の愛くるしい女性。株式会社ネットデイズのネットマーケティング戦略事業部アソシエイト戦略コンサルタントという軽いんだか重いんだかよくわからない長い部署名にわけのわからない肩書きを持ったWebマーケター。企業のWeb担当の方に顧客アプローチの提案を行い共に成果を上げるのが仕事です、と噛み砕いて説明する相手は東証一部上場の一洋ホームという大手住宅メーカー。GW向けキャンペーンの提案を行おうとしているようです。
 はてブで「カマっぽい」と的確な指摘を受けたWeb担当リーダーの板井さんは「異業種の素人に扱えるものじゃないわよ」とつれない様子。相手がイケメンかマッチョかくそみそだったら態度はちがったんでしょうか。「戦略やマーケは根っこは同じ」と苦笑いの瞳さん。どうやら存在感の薄いメガネの部長の顔を立てて、とりあえずやってみようとあいなりました。
 初めての大企業相手の仕事に張り切る瞳さん。ところがモデルハウスで次回打ち合わせのはずが本社に出向いてしまい大あわて。クールな板井さん、「本当にあんたみたいな女で大丈夫なの」と超高飛車。しかし真剣にモデルハウスの細部にわたって説明する横顔に意外な一面を見つけてぐっときた様子の瞳さん。でも、相手はカマっぽいぞ? 笑い。
 どうやらキャンペーンは「GWにマイホーム計画を立てよう」なるもの。ここで瞳さんと板井さん、またまた激突。板井さん、「KPIってやつはPVを1.5倍にして」と上から目線で問答無用。本当にそれでいいのかしら、と戸惑う瞳さん。いや、だめだろどう考えたって。
 しかし流されるがままに進むPR展開。キャンペーンサイトを設置し、TV CMから検索経由での流入を図り、外部出稿も実施。予想を超えて順調に伸びるPV数。
 ところが板井さん、まさかの手のひら返し。PVは増えたけどモデルハウス予約者数が増えないとカンカン。そして瞳さん、「あんたがPV増やせっていうから増やしたでしょ」と逆ギレ。えー、ちょっと待て……。それはだめだろ。「役立たず」と罵る板井さん、「聞く耳持ってないくせに」と完全に喧嘩腰の瞳さん。怒らすと怖いぞ、瞳さん……。笑い。
 しかしトイレで人知れず涙して冷静さを取り戻す瞳さん。板井さんに頭を下げ、私が予約者数を増やしてみせます! と啖呵を切る。「皆の生活がかかっているの。絶対成功させるのよ」と最後までオカマクールな板井さん。さあ、どうする瞳さん?!

ここがヘンだよ瞳さん
 んー、見出し書いてみて今さら思ったが、この漫画にまじでツッコミ入れても無粋じゃね? まあいいか。なんかこれだけ書いてしまうともう、書いた分もったいないやって感じだし。以下、怪しいマーケターがヘンだと思った点いくつか。
  • クライアントと自社の成果を念頭に置いているがエンドユーザが見えていない。それゆえ、ターゲット層はどういう人で、どのような属性や生活スタイルを持っているかについて検討を加えている節が見当たらない
  • 「うちは特殊な業界」は頻出ワードなのは確か。でも、「戦略やマーケの根っこは同じ」と言っていいのは、外部環境と内部環境をある程度把握した上での話。それはごくごく簡単な情報収集をするだけでもつかめるのだから、本気で仕事を取るつもりなら事前にやっておくべき
  • 事前調査をしていれば、そもそもモデルハウスの説明を多忙なWeb担当に頼むような真似はしない
  • キャンペーンのゴールはPV増、を鵜呑みにするWebコンサルタントなんか今どきいない。少なくともぼくはそうした人たちをWebコンサルタントとは認めない
  • クライアントのビジネスプロセス、特にマーケティングチャネル、Webチャネル、モデルハウス、セールスの役割分担について整理した上でキャンペーンのプランニングを行っている節がまったく見受けられない
  • PV数がそれだけ増えれば、普通は少しぐらいリードも増えるだろうと思うんだがまったく効果なしって、どれだけしょぼいキャンペーンサイト?
  • 本人も気づいたけれど、コンサルタントが冷静さを失っては……
とまあ、こんなところでしょうか。

怪しいマーケターが考えてみる(嘘)
 そんなわけで、いったん瞳さんのことは忘れて、ぼく自身のやり方でどうやるか考えてみます。
 と思ったんですが、そもそもマス媒体含めたキャンペーンとかやったことないし興味もないんでできないな……。

 ……。え、これで終わり? まあ、とにかくマスの部分はどこか別のエージェンシーが入っている想定でWebを中心にどうコミュニケーションを組み立てるか、を考えていきたいと思います。

 というか、実は数ヶ月前に住宅業界がらみでちょっとWebコミュニケーション戦略をどうするみたいな話が職場であって、実はもう考え済みなんですよね。それ、ずるくね? 笑い。

まず、顧客の立場を想像してみた
 ぼくは独身貧乏貴族ゆえ、正直一戸建ての家を買う人というのがまるでわからないわけです。身近で知っているのは父親ですが、まだ幼少の頃でまったく記憶なし。もちろん、その当時はインターネットはおろか、キャプテンシステムすらありませんでした。笑い。
 ただ、この業界については例えば神田昌典の初期の著書を読んでいれば具体的なケーススタディはいくつか出ているし、一般的な知識だけで組み立てても
  • 高額でリピート購買がほぼ存在しない
  • 購入者の年齢層は比較的高く、恐らく若くても20代後半以降
  • 現在は多くが実家か賃貸か購入したマンションに住んでいる
  • 結婚、昇進、子供の成長などライフスタイルの変化がきっかけで購入検討
ぐらいのあたりはつきそうです。

 まあ、この程度の理解では板井さんに鼻で笑われるだろうと思われるので、さらにたぐってみる、と。例えば、家の購入を決断して入居するまでを記したブログが検索するといくつも出てきます。ざっと斜め読みするだけでも、物件探しをどのように行ったか、購入にあたって何が決め手になったか、などがより明確になるはず。「e戸建て」のような掲示板サイトも理解を深める一助になりそうです。
 また、リクルート住宅総研が実施した「首都圏新築一戸建て契約者動向調査」「住宅購入検討者調査」のようなネット上で入手できる調査資料があるのでこれにも目を通します。
 2007年の「首都圏新築一戸建て契約者動向調査」を見ると、契約時の世帯主の年齢では30代前半が最も多く30〜40代で8割強を占めることがわかります。ライフステージ別では夫婦のみ世帯が2割強、子供あり世帯が7割弱。母数に足りない1割弱は単身者世帯ということかな。

さらに視野をひろげていく
 このあたりの資料を読んでいるうちに、どうやら一戸建てにはすでに出来上がっているものを購入する建て売り分譲住宅と更地に建てる注文住宅があること、注文住宅は工務店、建築家、ハウスメーカーの3つに大きく分けられること、などが飲み込めてくると思います。

 どんな人たちかがおぼろげに見えてきたので、実際どんな風に購入するのかをいくつかの角度からさらに見ていきます。まずやったのは、googleで「家づくり」で検索。するとトップに「一戸建て注文住宅&建替え。家作りちょっとイイ話」というサイトが出てきたので読んでみましたが、内容が充実していてわかりやすいです、これ。
 ここでは上位表示サイトやスポンサーサイトのほか、サジェストされるキーワードにも注目。「他のキーワード: 家づくり ブログ / 家づくり 失敗 / 家づくり 流れ / 家づくり 間取り / 家づくり 日記」が表示されており、どうやら他の人がどんな風に家を建てているのかが検索されている様子。

 これだけでも格段に理解は深まるのですが、さらにやっておきたいのは書店に行って住宅関連の雑誌を眺めること。ぼくはとりあえずリクルートの「月刊ハウジング」という雑誌を購入して読んでみました。500円と手頃な価格でフルカラー、購入者の住まい紹介や様々なハウスメーカーのモデルプランが豊富な写真入で紹介されていて何となく自分が本当に家を建てようとしているかのような気分になってきました。笑い。でも、この感覚は意外に重要なんじゃないかなあ。

 「月刊ハウジング」に目を通すとさらに、競合他社の商品特性や価格帯の比較、在来木造・2×4・鉄骨といった工法の違いなどがあることがわかってきました。
 さらに、各ハウスメーカーのWebサイトをざっと眺め、職場に行く途中に不動産屋があればウィンドウの物件案内を眺め、近所に建築中のへーベルハウスがチラシを置いていたのでもらって読んでみたり、電柱の捨て看板に注意したり、と意識を購入者に寄せつつ、一方で国土交通省の「住宅着工統計」でトレンドを追ってみました。このときは近畿圏の数字だけを見ましたが1999年度から2008年度の動きを利用関係別新設住宅着工件数で追ってみると総数は対1999年度比で2008年度は77.4と減少。これを持家・賃貸・分譲で見ると持家が2008年度には59.0と特に落ち込んでいることがわかります。あ、もちろん衣袋宏美「ネット視聴率白書2008-2009」(翔泳社)のカテゴリー別ランキングの「不動産/アパート」上位10ドメインにも目を通します。微笑。ここまでやると、板井さん相手でも勝負できるかな、という感じ。

 そして積みあがったのは……一生に一度とはいえ、これかなりしんどいな、という実感。預貯金額や融資、助成制度を含めた予算という制約、通勤圏という制約、世帯構成という制約、暮らしへのこだわりでのウェイトの置き方。そうした複雑な要因が絡む中での意思決定を促す、ということを念頭に置くと、ぼくはこの時点でたぶん短期のキャンペーン提案はしないかな、という結論に達しました。

 「GWにマイホーム計画を立てよう」、というメッセージ、これ弱くないですか? エンドユーザにどうメリット訴求を図るんでしょうか? モデルハウスに誘客するためのインセンティブ設計は? なぜ、今、GWじゃなくちゃいけないの?

 一洋ホーム以外にもたくさんの選択肢がある中で、それこそどれを選んだらいいのかよくわからないほど選択肢が有り余っている中で、なぜキャンペーン期間中にエンドユーザがモデルハウス見学申し込みを行うのか、そこのロジックがぼくには描けそうにありません。

ベストプラクティスを探し、リポジショニングする
 ぼくは提案を組み立てるにあたっては、できるだけ競合他社の取り組みを見た上で、その中に際立った特徴を出しているものがあれば事例として紹介するようにしています。住宅業界の中でぼくは3つほど注目したものがあったのですがそのうちの1つは「無印良品の家」です。

 「無印良品」自体が持つシンプルでコストパフォーマンスに優れた一貫性のあるものづくり、というブランドイメージをベースに、コンセプトを明確にしたハウスプランの提示、「みんなで考える住まいのかたち」のようなアンケート・投稿による共感性を高める消費者参加型コンテンツの活用、7つのポイント別に必要なものを選ぶことができる家づくり講座の実施など、そこからは「一生に一度の買い物かも知れないけれどそれまでの間じっくりお付き合いします」という誠実さが感じられるわけです。

 そして、すでにそこに在る競合他社に対して、自社は見込み客の頭の中でどのように位置づけられていて、そこから今後どこのポジションを目指すべきなのか、そのためにWebはどう活用されるべきなのか、をクライアントとともに、エンドユーザを視野に入れて考えていくのがぼくのイメージするWebコンサルタントの仕事です。

そして唐突な結論
 そんなわけで、ぼくがクライアント側の立場の人間ならば、瞳さんは個人的に好みではあるのだけれども、仕事を頼むならいけすかない明日香さんかなあ、と。







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