キーエンスがジャストシステムを傘下に

marketing 】 2009 / 04 / 05
2年近く前、ぼくは「Googleが不滅を迎えるとき」というエントリでGoogleによるジャストシステムの買収もしくは包括的業務提携の可能性について書きました。
日本、そして中国、この巨大な市場に対し彼らはこのまま手を打たずにいるのでしょうか?

ぼくはそうは思いません。Googleはこのハードルを越えるためにおそらく、ある企業の買収もしくは日本語関連技術のライセンス供与を含む包括的な業務提携をすでに念頭に置いているんじゃないかと邪推しています。ある企業って? そうジャストシステムです。

ジャストシステムはMicrosoftとのオフィススイートのデファクトスタンダードを巡る激しい争いに敗れ、一太郎とATOKを市場に供給しつつも、独自に積み上げてきた日本語処理技術をベースにしたConceptBaseや統合XMLアプリケーション開発・実行環境を実現するXfyのようなエンタープライズ向け製品に活路を見出そうとしています。特にXfyについては国内外で積極的な展開を図るべく、2006年10月にIBMと包括的な協業契約を締結するなど、新たな成長路線の基盤をここに置いているようです。しかし時価総額は232億円、Googleからすれば小遣い銭同然(ほんとかよ。笑い)。創業者夫妻と常務で持ち株の過半数を占めており、お互いに納得できる形を築ければジャストシステムがGoogleの傘下に入るというのはありえない話じゃないんじゃないかと。

衰弱堂雑記:Googleが不滅を迎えるとき
しかし、キーエンスの傘下に入るというのはまったく想定外。苦笑。

報道は各社ともほぼ同様の内容。ロイターより。
[東京 3日 ロイター] ジャストシステム(4686.Q: 株価, ニュース, レポート)は3日、キーエンス(6861.T: 株価, ニュース, レポート)に第三者割当増資を行い約45億円を調達すると発表した。両社は資本・業務提携を結ぶことで合意した。

 ジャストシステムは、データベース用コンピュータ言語の「XML」を使ったドキュメント作成・編集を可能にする開発言語「xfy」に経営資源を投入してきたが、当初見込んでいたような急速な市場の立ち上がりとはならかった。08年3月期まで3期連続で赤字が続いたため経営体質の改善を図り、一時は軌道に乗り始めたものの、昨年秋以降の景気の冷え込みで受注が大きく落ち込んだという。09年3月期も大幅な赤字になる見通しであり、資金繰りも苦しくなってきたため、キーエンスとの資本・業務提携で打開を図る。

 普通株2823万4300株を1株当たり160円で発行し、約44億9600万円を調達する。調達資金は運転資金や借入金の返済に充当する。払込日は4月20日。キーエンスは43.96%を保有する筆頭株主となる。
 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者)

ロイター:UPDATE1: ジャストシステム<4686.Q>、キーエンス<6861.T>に第三者割当増資
約44%を約45億円で取得、とのことなので時価総額は100億相当の評価ということになるんでしょうか。2年前の半値以下。

Xfy事業の見込みちがいはとにかく度外れていて、2008年3月期決算の事業戦略説明会資料を見ると、売上は1億7千万で対計画比10%の惨敗。これが2009年3月では36億から40億見込みという、狸どころか捕らぬマンモスの皮算用。が、マンモスは見つからなかったようで北米の営業拠点の閉鎖をはじめとする海外事業の縮小など撤退戦がはじまるもののゴーイングコンサーンに注記がついて風前の灯。Imagine that no ATOK。それは困るなあ、というところに現れたキーエンスさん、まじかっこいいっす。

それにしても、なんでキーエンス?

キーエンスはファクトリーオートメーション向けのセンサメーカー大手。国内企業ではオムロンなどが競合。センサとかいわれても自動ドアぐらいしか見たことないわけですが、工場の製造ラインを流れる部品や完成品の良品/不良品を検知するのに使ったりする、とかなんとか。売上高営業利益率が5割という超優良企業。ファブレスで、営業が生産現場に張り付いてコンサルティング提案を行う直販体制とそこで得られた現場のニーズを反映したR&Dによる高付加価値製品特化がそのからくり。他社より高いけれど使いやすい、あるいは他社にはない製品を提供することで業績を伸ばしていると。

しかし、ジャストシステムとキーエンスはまったく接点ないわけです。実際に本件のニュースリリースを見ても過去に資本・取引・人的関係はなし。

あちこち見ていても「キーエンスがATOKをばんばん売りつけにくるんじゃ」とか「PLCのアプリケーション作らせるんじゃ」みたいな話はでてくるわけですが、それはどうかと。この辺がどうもよくわからないなあと思っていたら、面白い見方をしている記事が1つあります。
 キーエンスの主力はファクトリーオートメーション(FA)向けセンサーの製造・販売で、代理店を介さない独自の営業網を持つ。ジャストは業務用のデータ管理ソフトなどをこの販路を使って拡販。キーエンスも自ら手掛ける検索ソフト開発などを強化する狙いがあるとみられる。

NIKKEI NET:「一太郎」のジャストシステム、キーエンスが出資 株44%取得
え、キーエンスって検索ソフトなんて作ってた?

……作ってました。キーエンスのWebサイトはきちんとしたニュースリリースがなくて、いつ何をやっているのかさっぱりわからないのですがPRO-Searchなるものが。いつの間にこんなものを。日経の記者の方しか気づかなかったということなんでしょうかね、これ。もう一つ、PRO-iDBなるデータベースソリューションも。

ということで、まったくシナジーがないのかといえばまあそんなこともない、と。ただ、これまた毎日新聞だけが報じているようなのですが、「キーエンスは『子会社化は目指さない』としている」とのこと。

そもそもエンタープライズサーチはジャストシステムのConcept Baseにしても2008年3月期実績で10億超とカスペルスキーに毛が生えた程度。Microsoft、IBM、Google、Oracleなどの海外大手ベンダー、ジャストシステムや日立ほか国内ベンダーがひしめくシビアなマーケットでキーエンスが本気で出て行く余地はないでしょうし。

おそらくは自社のコンテンツマネジメントで必要に迫られて内製したものをWebサイトに流用しつつ、仕様書、CADデータその他の多様なフォーマットでドキュメントを持たざるを得ない同様のワークフローで動いている既存取引先の製造業向けにちょっと売ってみようか、といったレベルではないかと。

となると、キーエンスによるジャストシステムの株式取得は単純に純投資、とみていいのかもしれません。

キーエンスの主要取引先は大手から中小零細にいたるまでの製造業。ところがご存知のようにアメリカ市場の急激な冷え込みで例えば自動車業界は米国ビッグ3が政府の追加支援を受けるなど青息吐息。関連メーカーぐるみでリストラや生産調整が進む中、まっさきに設備投資は抑制。国内製造業各社も多かれ少なかれ同様の状況で、結果的に2008年度第3四半期を境に大幅な売上下落に見舞われています。

そうした中で、高い利益率により潤沢な内部留保のあるキーエンスとしては、行き先のないキャッシュを寝かしておくのならば筋のいいところに入れてみようか、といった判断なんですかねえ。キーエンスは会社概要が実に貧弱で主要取引行がわからないんですが、メインバンクもしくは幹事証券会社つながりでの今回のびっくりディール? まじめに売れば、xfyはともかくConcept Baseとかもう少しなんとかなるんじゃね、と。月額制のATOKも悪くないビジネスだし、うまく立ち直れば2倍にならね? といった判断はあるかも。

もっともキーエンスの本業の見通しについては、プロはまた別の見方があるようで、UBSのアナリストいわく「合理化・省力化ニーズは底堅くキーエンスの落ち込み幅は相対的に小さい」、とか。どうなんでしょう。逆にそうしたニーズがあっても、競合他社との価格差(でなければあれだけの粗利が出るとは思えない)からユーザがスイッチしないんでしょうか。

さて、ここまで書いてみても結局よくわからない今回の提携なんですが、じゃあGoogleがキーエンスの代わりに乗り出す可能性はなかったんでしょうか。今の時点ではぼくはなかったと考えざるを得ません。なぜか? ストリートビューを巡る一連の騒動を見た後で考えると、Google日本法人にはそうした主体的なアライアンス戦略を進める機能がないと思わざるをえないからです。逆に、米国本社から見た場合、日本市場にそこまで積極的に参画する意思もなさそうです。それがよいことなのか悪いことなのかは分かりませんが。

そして最後にキーエンスがジャストシステムを傘下におさめた最もありえなさそうな理由を一つ。

……競合のオムロンが子会社のオムロンソフトウェアでWnn作ってるからじゃ?

もしそうだとすると、キーエンスは次はオムロンヘルスケアを意識してタニタあたりに手を出すにちがいない。笑い。






Comment(1) | TrackBack(0) | marketing

この記事へのコメント
ニタニタ...w
Posted by オヤジギャガー at 2010年08月05日 19:23
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